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日本バスケ史上最高の逸材、八村塁の大学バスケ挑戦1ヶ月を戦い終えての好評価

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
強豪ゴンザガ大でNCAAデビューを飾った八村塁選手(写真:田村翔/アフロスポーツ)

普段は野球中心の取材をしている身でも、バスケの八村塁選手の噂は耳にしていた。

昨年は唯一高校生として日本代表候補に選出されると、今年5月にはスカラシップ(スポーツや学業優等生に与えられる奨学金制度)を受けていた強豪ゴンザガ大への正式入学を目指しての渡米を発表。これまでの日本人選手では考えられない“エリート街道”を歩む八村選手に、密かに期待を膨らませていた。

米国の場合9月から新学年が始まり、バスケ・シーズンは11月に開幕する。まだ英語習得に時間がかかると思われていた八村選手は、「レッドシャツ」(一定の学業基準に満たない学生を対象にチームに所属しながらも1年間は公式戦に出場できない制度)に回るとの予想が多かったが、無事にロースター入りを果たし、11月11日のシーズン開幕戦でデビューを飾った。

NCAA(全米大学体育協会)最高位のディビジョンIの公式戦出場は日本人選手として史上4人目だが、全米ランキング25位以内(11月28日現在で8位)が定位置のような強豪校に所属するのは八村選手がもちろん初めてだ。

だがここまでの活躍は決して華々しいものではない。今月は6試合を消化し、チームは6連勝を飾っている一方で、八村選手は4試合に出場し、出場時間はわずか15分で合計得点は7点。主力選手としてローテーションに入れていない状況だ。だからと言って彼がNCAAで通用しないからではない。むしろ八村選手に対する期待度は高まっているといえる。

11月18日のブライアント大戦を中継した地元TV局の解説者は、八村選手のプレーを以下のように解説している。

「ルイの身体能力は素晴らしく、その可能性は計り知れない。今は技術云々よりも英語が壁になっているが、好守ともにチームに大きなインパクトをもたらすのはそう遠いことではないだろう。

ルイがすべてを兼ね備えた時こそ、本当に恐ろしい選手になるだろう。彼は現在4番(パワーフォワード)をやっているが、彼の身体能力なら3番(スモールフォワード)ができるのではないか。ゴンザガ大にこれまで存在しなかったオールラウンドの3番になれる可能性がある」

それだけではない。将来のNBAのドラフトを予想しながら将来有望な選手をチェックしているNBADraft.netは今年7月の時点で、2018年のドラフト予想では八村選手が全体の8番目(現在は22番目になったものの依然として1巡目予想)で指名されると予想するなど、米国内でも各所でその才能が高く評価されている。これまで現行制度(1989年から各チーム2巡指名で終了)下で日本人選手がNBAのドラフト指名を受けたことなどなく、現時点で間違いなく“NBAに最も近い日本人”と断言していいだろう。

まだ渡米して半年あまり。英語がままならない八村選手がチーム内で完ぺきな意思疎通をするのは不可能だし、試合中にコーチの戦術や指示を理解するのが難しい状態で主力になれるはずもない。大方の予想通りレッドシャツに回り、英語を習得しながら1年かけて新しい環境に慣れる道もあったが、最近のインタビュー記事によると、自らの意志でロースター入りを選択したようだ。ただチーム練習に参加するよりも、短い時間ながらもしっかり実戦を積み重ねる方が成長への近道なのは確かだろう。

まだシーズンは始まったばかり。来年春まで続くシーズンで八村選手がどこまで成長を遂げるのか。今から楽しみで仕方がない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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