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25歳未満の大谷選手はプロ選手、それともアマチュア選手?MLB移籍で注目される身分扱い

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
早ければ2017年シーズン後にMLB移籍の可能性がある大谷翔平選手(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

5日に行われた契約更改の場で、日本ハム、大谷選手の双方が将来的なMLB移籍について言及したことで、早くも米国で大きなニュースとして扱われる一方で、大谷選手の身分扱いについて大きな物議を醸し出している。

米国東部時間の午前5時21分(日本時間の同日午後7時21分)にはMLB公式サイトが、早ければ2017年シーズン終了後にMLBに移籍する可能性があることという特集記事を掲載した。その後もESPNやFOXスポーツなど各主要メディアも次々に詳細を報じた。改めて米国内における大谷選手への関心の高さが浮き彫りになった。

その一方で、現在22歳の大谷選手の身分扱いについて様々な憶測を呼ぶ事態になっている。すでに日本のスポーツ数紙でも取り上げられているのだが、新たにMLB機構と選手会の間で新労働協約が合意した段階で、いくつかの米メディアが25歳未満の大谷選手はポスティング制度の対象外になり、契約年俸が大幅に制限されると報じたのだ。

これに対し、日本のスポーツ紙は日米間で協約があり、大谷選手も問題なくポスティング制度の対象になるとしている。しかし実情は、そう簡単ではなさそうなのだ。

新協約の全貌が明らかになった時点で、自分も軽く目を通してはいた。確かに外国人選手の契約に関する条項があり、各チームの交渉機会を平等にするため契約年俸に上限が設けられていた。しかしこの項目は「外国人アマチュア選手の獲得に関して」というものだったので、日本のNPB選手は対象外だと早合点してしまい、詳しくチェックを怠ってしまった。

ところがだ。今回の騒動が起こったことで再度チェックし直したところ、この項目の最終条項に以下のような一文があったのだ。

“外国人プロ選手は引き続き対象外となる。なお外国人プロ選手とは、コミッショナー事務局が認めている外国リーグで最低6年以上在籍経験のある25歳以上の選手を指すものとする”

つまりこの条項を適用すれば、大谷投手は「プロ選手」ではなく「アマチュア選手」扱いになるということなのだ。ここでも紹介したことがある球界きっての敏腕記者として知られるFOXスポーツのケン・ローゼンサル記者も、この件に関して以下のような見解をツイートしている。

「オオタニの所属チームは来シーズン終了後にポスティングによる移籍を考えているようだが、彼は25歳未満の選手として外国人アマチュア選手扱いになるだろう。

MLBと選手会はオオタニがFA扱いで来られるようにCBA(労働協約)を見直す必要があるだろう。現時点では、今後日米間で協議される新しいポスティング・システムよりもCBAが優先される」

この疑問を解決すべくMLB機構広報部に確認の連絡をしているのだが、残念ながらまだ何の回答も届いていない。

果たして大谷選手の身分はどういう扱いになるのか?今後も日米で注目を集めそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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