Yahoo!ニュース

MLBとメッツが協力し故チーム・スタッフの名を冠した球場建設へ、心温まる慈善活動の中身

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
メッツのジェフ・ウィルポンCOOも会見に出席し故人を偲んだ(写真:ロイター/アフロ)

遂にMLB最大のイベント、ウィンター・ミーティングが5日、開幕した。早速注目FA選手の1人、マーク・メランコン投手のジャイアンツ入りが決まるなど、会場周辺では活発な契約交渉が展開している。

そんな中、ミーティング開幕早々、アメリカならでは心温まるニュースが飛び込んできた。メッツが今年3月に他界した広報スタッフを偲び、彼女の名を冠した球場を建設するため、MLBと協力してミーティング期間中にネット・オークションを実施し、資金集めをするというものだ。

メッツで長年広報スタッフを務めていたシャノン・フォード氏が乳がんによる闘病生活の末44歳の若さでこの世を去ったのは、今年3月4日のことだった。キャンプ取材中にそのニュースを聞いた時は、衝撃を受けた1人だった。

1997年に巨人の柏田貴史投手がメッツ初の日本人選手と契約して以降、同チームに在籍した吉井理人投手、野茂英雄投手、マック鈴木投手らを担当し、何度もフォード氏にはお世話になっていた。メッツの広報スタッフの中では何でも迅速に対応してくれ、本当に頼りになる人物だった。

その後メッツから日本人選手が去り、自分もメッツの本拠地球場に行く機会が少なくなったが、たまに顔を出せばいつも笑顔で出迎えてくれた。それが昨年のプレーオフ取材で久々に本拠地球場を訪れた際、彼女の姿がなく気にはなっていたのだが、まさか闘病生活を強いられていたのは想像もしていなかった。

そんなフォード氏の死を悼み、MLBでは2016年版のメディア・ダイレクトリーのトップページに彼女の遺影を加え、メッツも彼女のの誕生日に合わせ試合前に追悼イベントを実施して、故人を偲んでいる。

今回は5年前からMLBが実施している「プレーボール」というチャリティ・オークションを利用し資金を集め、フォード氏の故郷であるニュージャージー州リトル・フェリーに、彼女も幼少時に遊んでいたという球場を大幅改装し「シャノン・フォード・フィールド」を建設するというものだ。記者会見には20人以上のチーム・スタッフが集結し、ジェフ・ウィルポンCOOもその1人だった。

「ここに集まっているスタッフの数をみればわかる通り、我々は今でもシャノンを恋しく思っている。我々の友はあまりにも突然に去ってしまった。今回彼女の故郷や家族のためにシャノンを思い出させる機会ができたことを心から喜んでいる」

ちなみにオークションで集まった資金では足りなかった分は、メッツとMLBが資金提供し、球場を完成させる予定だという。

今回の球場建設に関し、フォード氏の上司だったジェイ・ホーウィッツ広報担当副社長も以下のようにコメントしている。

「シャノンの2人の子供たちはまだ若い。将来成長した2人がこの球場を通じて、彼女がどれだけ素晴らしい母親だったのかを理解してもらえたらと思う」

グラウンド上だけでは語り尽くせない、米国のプロスポーツの奥深さを感じてもらえたら幸いだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事