すでにMLB球界でも規格外!大谷選手の身分扱いで大騒動の日米両国
この数日間、MLBと選手会が合意した新労働協約の下での大谷翔平選手のMLB移籍について、日米両国間で一大論争が巻き起こってしまった。
自分も新協約下での大谷選手の身分扱いが明白になっていない状況を記事にまとめたが、その後MLB広報からも回答が届き、すでに各メディアが報じているように、25歳未満の大谷投手は「外国人プロ選手」の規定を満たしておらず、アマチュア選手として「インターナショナル・サイニング・ボーナス・プール(International Signing Bonus Pool)」が適用されることが判明した。
2012年から導入されたこのルールは、外国(カナダ、プエルトリコ以外)の有望若手選手を各チームが均等に獲得できることを目的に、すべてのチームが限度額以内の契約金しか支払うことができないというものだ。当初は23歳未満の選手が対象だったのだが、新協約になって25歳未満に引き上げられたため、大谷選手も2019年シーズンまで対象選手になってしまったのだ。ちなみに新協約での限度額はドラフト指名権によって3種類に分けられ、475万ドル、525万ドル、575万ドルのいずれかに制限されることになっている。
大谷選手がNPBでFA資格を得る前にMLBへ移籍するには、これまで同様ポスティング・システムが唯一の手段だ。ただこれまでポスティング・システムを利用した場合、選手たちがMLBチームと交渉する際は、皆FA選手と同様の扱いで自由な契約交渉ができた。
例えばヤンキースと契約した田中将大投手が7年契約を結んだ際に、2017年シーズン終了後に契約解除してFA選手になれるオプション権(本来はMLB在籍6年をクリアしないとFA資格を得られない)を加えることができたのも、そのためだ。
だが大谷投手は今回の新協約により、アマチュア選手と同じ扱いになるため、FA選手として自由な契約交渉ができなくなってしまった。言い換えると、「外国人プロ選手」の規定を外れた選手は、ドラフトで入団してくる米国内のアマチュア選手と同じ契約過程を踏むため、最初からメジャー契約すら結ぶことはできないのだ。
さらに移籍1年目のシーズン開幕からメジャーに昇格しても、年俸額はかなり抑えられ、MLB在籍3年後(もちろんマイナー在籍期間はカウントされず)に得られる年俸調停の権利を得るまで年俸額は相当据え置かれることが予測される。
また田中投手のように、交渉時にオプション権を加えることは不可能なので、契約したチームがトレードか解雇をしない限り、FA資格を得るまで所属チームに拘束されることになる。言うまでもなく、これまでのポスティング・システムを利用した選手よりも厳しい条件の中で契約しなければならない。
ただ「インターナショナル・サイニング・ボーナス・プール」がこれまで正常に機能していたかといえば、そうではない。例えばレッドソックスは2015年に、19歳のキューバの有望内野手、ヨアン・モンカダ選手と契約した際、チームに与えられた上限額をはるかに上回る3150万ドルの契約金で合意している。他にもルール違反したチームがいくつか存在している。
前協約ではルールを破ったペナルティとして、上限額を超えた額と同額をぜいたく税としてMLBに支払うことが義務づけられていた。だが新協約では、違反した際のペナルティは「厳しい処罰」とあるだけで具体的な内容は明記されていない。ペナルティの内容にもよるだろうが、大谷選手との契約交渉でルールを破るチームが出現する可能性もあるのではないだろうか。
いずれにせよ新協約で対象年齢を上げたのは、外国人アマチュア選手も、MLB在籍6年を待たないと自由な契約交渉ができない国内アマチュア選手に近い条件に揃えたいという単純な思惑からだと思われる。
ただ現在の混乱ぶりを見てもわかるように、MLB球界にとっても大谷選手がすでに規格外の存在になっているという裏返しでもある。今後は労働協約の改正問題まで議論が発展するかもしれない。