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2017年に田中将大投手が“絶対的エース”に君臨するには

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
2016年シーズンは田中投手がヤンキースの先発陣を支えた(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

2016年シーズンの日本人メジャー選手の中で、顕著な活躍をした1人がヤンキースの田中将大投手だろう。

メジャー3年目の今年、先発陣の中で登板試合数こそチーム2位だったが、勝利数、防御率、投球イニング数、勝率ですべてチーム1位の成績を残した。シーズン中から地元メディアが評価していたように、もはやヤンキースのエースと呼ぶに相応しい存在になった。

まだ周辺では右ヒジじん帯損傷を不安視する声が完全に消えたわけではないが、自身初めて故障者リストに入ることなくシーズンを乗り切ったことは、田中投手にとっても大きな自信になったはずだ。

しかし敢えて厳しい見方をしたい。田中投手が年俸に見合った活躍をしたかといえば、決してそうとは言い切れないと思っている。

2016年の田中投手の年俸は2200万ドルだった。ちなみに「USAトゥデー」紙のデータベースによると、投手で2000万ドル以上の年俸をもらっていたのは、わずか15人しかいない(ちなみに田中投手は10位にランク)。しかも全員が先発投手だ。現在でも年俸2000万ドルを勝ち取るということは、ごくわずかな“絶対的エース”として活躍してきた投手に与えられた栄誉を意味するものだ。

絶対的エースとは何か?シーズンを通してローテーションの中心に座り、常に安定した成績を残しながら試合数は33以上、投球イニング数でも220ぐらいまで投げることをチームから期待され、実際に実行できる投手だ。年俸2000万ドルを超える投手たちは、皆それを実行しながら高額年俸を勝ち取ってきたのだ。残念ながら田中投手は、まだその域に到達していない。

興味深いデータを紹介したい。今年地区優勝を果たしたア・リーグ3チームの先発投手が投げたイニング数だ。レッドソックスが961.1イニングでリーグ3位で、インディアンズが936.1イニングで同4位、レンジャーズが921.1イニングで同6位にランクしている。ちなみに同1位は995.1イニングのブルージェイズで、地区優勝は逃したがプレーオフに進出しているし、108年ぶりにワールドシリーズを制覇したカブスも、ナ・リーグ1位の989.0イニングとなっている。ちなみにヤンキースは同10位の916.0イニングだった。

ア・リーグ全体で完投数が(全1214試合中)44試合しか記録されず、投手の分業制が確立される現在、リリーフ陣が疲労を残さずにシーズンを乗り切るには、ローテーションの軸になり、常に長いイニングを投げてくれる先発投手が必要になってくる。もちろん先発投手の投球イニング数がすべてとは言わないが、データが示す通り、プレーオフ進出チームは間違いなく先発陣が安定している。

エピソードを1つ紹介したい。今シーズン限りで引退した黒田博樹投手がヤンキースに移籍した2012年のキャンプで、ロスチャイルド投手コーチに「クロダに30試合、200イニングを期待するか?」と尋ねたところ、以下のような答えが返ってきた。

「それでは足りない。最低でも33試合は投げてもらわないとね」

これこそが軸になる先発投手に期待する、首脳陣の掛け値無しの本音だ。そしてそのシーズンの黒田投手は、チーム1位の33試合、219.2イニングを記録し、チームの地区優勝に貢献している。

現時点でヤンキースは、先発投手の補強に動いていない。来シーズンも間違いなく田中投手が先発陣の軸にならなければならないし、チームが上位を目指すためにも、今年よりワンランク上の絶対的エースとして君臨してもらわなけばならない。

決して無理難題を言っている訳ではない。米国で権威のある野球専門サイト「Baseball Reference」によれば、田中投手の3年間の成績を162試合平均でプロジェクトすると、34試合、222イニングに達するとしている。それは裏を返せば、過去2年間も故障さえしていなければ、絶対的エース並みの成績を残せていたことを意味するものだ。

さらに通説として手術をした投手は、復帰1年目より2年目のシーズンの方が良い成績を残せると言われている。田中投手も2015年オフに右ヒジの遊離軟骨除去手術を受けており、来年が復帰2年目のシーズンとなる。

ちなみに黒田投手が初めて200イニングを達成したのは、メジャー移籍4年目のことだった。来シーズンは田中投手の更なる飛躍を期待したい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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