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続・2017年に田中将大投手が“絶対的エース”に君臨するには(補足説明)

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
来シーズンのヤンキースの行く末を左右する田中将大投手(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

前日の「2017年に田中将大投手が“絶対的エース”に君臨するには」では期待以上のPVを記録することになり、感謝の言葉しかない。

だが総論的な説明で終わってしまったためなのか、「これ以上無理をしてほしくない」という記事に関するコメントを発見し、“絶対的なエース”になるために田中投手に何か無理を強いるようなイメージを抱かれてしまった方もいたようだ。間違いなくこちらの説明不足で不徳の致すところです。

そこで今回は、もう少し具体的に話を進めながら前回の補足説明をしていきたい。

繰り返しになってしまうが、来シーズン予想されるヤンキースの戦力を考えれば、田中投手が先発陣の柱にならなければならないし、そのためには1年を通してローテーションの軸として投げ続けなければならない。

だが前回も説明した通り、無理難題を言っているつもりは毛頭ない。今まで以上の頻度で投げる必要はほとんどなく、実は今年の段階で、かなり理想に近い登板を実践しているのだ。

前回は絶対的エースの条件として、33試合登板、220イニングという目安を提示した。これを実行できる投手がチームに1人いれば、首脳陣はローテーションが組みやすいし、リリーフ陣の負担をかなり軽減させてくれるためだ。

ちなみに今年の田中投手の登板数は31試合で、投球イニング数は199.2イニングだった。ただシーズン終盤に右前腕部張りを起こし、チームの方針で最終登板を登板回避しているので、今年のペースでも順調なら32試合は投げられていたわけだ。さらに毎年試合日程の組み方で登板間隔は微妙に違ってくるものなので、大幅に中4日登板にシフトする必要なく、33試合登板に到達できるものだ。

さらに月間成績をチェックしても、今年は6月以外はすべての月で防御率3.00以下をキープ。シーズン終盤に疲労が溜まっていないわけではないと思うが、現在のペースでも最後まで安定した投球を維持しており、1、2試合の登板数増加で、身体への負担が極端に増えるとも思えない。

ということで、課題となってくるのはイニング数ということになる。ほぼ今年とほぼ同じペースで投げながらイニング数を増やすには、1試合当たりの平均イニング数を上げていくしかない。そしてその解決策は、すでに世間一般に知られていることなのだ。

ヤンキースのブライン・キャッシュマンGMが何度か指摘しているように、田中投手の成績は中4日登板と中5日以上登板でかなりの開きがある。今年は中4日登板が14試合あり、4勝3敗、防御率は3.71、平均イニング数は6.0イニングに対し、中5日以上登板は計17試合で10勝1敗、防御率2.56、平均イニング数は6.2イニングとなっている。

つまり中4日登板でより安定的な投球ができるようになれば、着実にイニング数を伸ばすことが可能になる。もちろんデータが示しているように、田中投手が中4日登板に対応し切れていないのは明らかであり、改善するのは簡単ではないだろう。

だが黒田投手がそうであったように、体調が万全ではない中で、その日の投球の状態を見極めながら投球を組み立てる技術を磨いていくことはできる。今年は最後まで防御率のタイトルを争ったのも、この3年間で田中投手が着実にメジャー流に対応しているからではないか。

改めて断言する。来シーズン田中投手が絶対的エースとしての役割を果たすのは、決して夢物語なのではない。むしろあと一歩前進するだけで手の届く位置に来ているのだ。

もうこれ以上の説明は不要だろう。あとは彼の投球を見守るだけだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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