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WBCを機に野球人生が暗転していった選手たち

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
第2回大会に米国代表として出場したオズワルト投手(写真:ロイター/アフロ)

第4回大会を前に、マックス・シャーザー投手、フェリックス・ヘルナンデス投手ら球界を代表する先発投手たちが次々に参加表明を行い、これまでにない盛り上がりをみせている。

ジョー・トーリ氏をGMとした米国代表は過去最強の布陣を揃えるのではと噂される一方で、前回大会優勝のドミニカ代表や強豪ベネズエラ代表もMLBを代表するスター選手たちを招集できるよう話し合いを進めているようだ。侍ジャパンにとって今まで以上の厳しい戦いを強いられることは間違いなさそうだ。

その一方で、第3回大会まで選手派遣に否定的な発言を繰り返してきた各チーム首脳陣たちが、今回は箝口令でも敷かれているのかと思わせるほど、表面上は一様に「参加は選手が決めるもので、その意志を尊重したい」と口を揃える。しかしウィンター・ミーティング期間中に前田健太投手の参加の可能性について聞かれたドジャースのデーブ・ロバーツ監督が、一度は「ケンタは出ないと聞いている」と発言しながらチーム関係者に耳打ちされ発言を撤回したところを見ると、どうやら各チームとも選手たちと水面下で交渉を行っているのだろう。

やはり各チームが心配するように、スプリングトレーニング期間中の真剣勝負は選手たちに必要以上の肉体的負担を与えるのは否定できないし、特に先発投手は前倒しの調整を強いられるため、シーズンへの影響も危惧されている。そして実際にWBCを機に、野球人生が暗転してしまった選手たちが存在しているのだ。そんな選手たちの何人か紹介していきたい。

●松坂大輔投手(第1、2回大会出場)

すでに日本では最も有名な例だろう。2つの大会でMVPを受賞する活躍をみせたが、レッドソックスの一員として出場した、第2回大会終了後のシーズンは右肩の疲労を理由に開幕早々に故障者リスト入り。結局この年は12試合しか登板できず、さらに翌年はシーズン途中でトミージョン手術を受けることになった。

●ロイ・オズワルト投手(第2回大会出場)

長年アストロズの主力先発投手を務めていたオズワルト投手が米国代表として参加。3試合で11.1イニングを投げたものの、防御率は5.56に終わった。シーズンに入っても本来の投球を取り戻すことができず、30試合を投げ、8勝6敗、防御率4.12と結果を残すことができず、メジャー初昇格から続いていた連続2桁勝利が途絶える。

翌年は再び13勝を挙げるが、2011年以降は故障や契約問題を抱え、2013年シーズンを最後に35歳ながらMLBのマウンドから消えていった。

●アルモンド・ガララーガ投手(第2回大会出場)

メジャー2年目の2008年に30試合(うち28試合に先発)に登板し、13勝7敗、防御率3.73、178.2イニングを投げ、タイガースの先発陣の仲間入りを果たした。

WBCはベネズエラ代表として参加し、2試合で7.1イニングのみの登板だった。シーズンに入るとホーム開幕戦の先発投手に抜擢されるなど期待を集めたが、6勝10敗、防御率5.54に終わった。2010年は誤審のため残り1アウトで完全試合を逃す好投を披露したこともあったが、結局4勝9敗、防御率4.49と調子を取り戻せず、2011年以降は2年間でわずか13試合に投げただけで、30歳を最後にMLBの舞台に戻ってこなかった。

●オリバー・ペレス(第1、2、3回大会出場)

24歳の若さでメキシコ代表として第1回大会に出場すると、その後も第2、3回と全体会出場を果たす。メジャー昇格当初から左先発投手として将来を嘱望されていたが、2006年のシーズンはエースとして期待されながら乱調が続き、シーズン途中でメッツにトレード。2007、2008年は奮起し、29、34試合に先発し、いずれも2桁勝利を記録した。

しかし第2回大会があった2009年はシーズン途中で右ヒザ負傷の修復手術を受け、14試合しか登板できず。翌2010年はシーズン途中から中継ぎに転向したものの成績を残せず。チームからのマイナー行きを拒絶するなどしてチームを去り、2012年にシアトルと契約するまでMLBから身を引いていた。復帰後は中継ぎ投手専門として今も投げ続けている。

今回は最も影響を受けやすいと言われる先発投手のみを紹介させてもらい、あくまで何人かを抜粋しただけだ。しっかりデータをチェックしたわけではないので断言はできないが、まだリリーフ投手や野手にもWBCの影響を受けた選手がいる可能性はある。

もちろんすべてのケースがWBCの影響だとは思わないし、多少の偶然が重なったというのもあるだろう。だがこうした選手が存在している限り、各チームの首脳陣の心配が絶えないのは仕方がないところだろう。

第4回大会でスター選手に影響がでないことを祈るばかりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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