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投手として更なる高みを目指す37歳五十嵐亮太の飽くなき探求心

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
来シーズンに向け本格的な自主トレをスタートさせたソフトバンク・五十嵐投手

ソフトバンクで最年長選手となった37歳の五十嵐亮太投手が米国で、来シーズンに向け本格的な自主トレをスタートさせた。

ただ今回は例年から比べると、やや遅れての始動となった。というのも、シーズンオフと同時にメキシコのウィンターリーグに参戦し、12月4日まで1ヶ月あまりの間実践登板を続けていたためだ。契約更改などで一時帰国はしたものの、18日は米国に戻り、自主トレを開始するという慌ただしさだ。

まさに休む暇も無い忙しいオフを過ごしているにもかかわらず、五十嵐投手の表情は充実感に満ちあふれていた。

「(自主トレの)スタートはメキシコの疲れをある程度とってからになったので、例年よりちょっと緩やかですかね。ただシーズン後も身体は動かしていたので、(動ける状態に)戻るのも早いんじゃないかなと思います。年齢を重ねると、もちろん身体の疲労もないわけではないんですけど、どちらかというとメンタル的に疲れるんじゃないかというか、精神的にしんどく思いがちになってしまうんです。

今年は自分が満足のいく仕事ができなかったですし、シーズン最後の方でもう少し投げたかったのもあってメキシコに行きました。またそうすることによって心の若さとでもいうんですかね、それも維持できるんじゃないかと思っての決断でした。そのお陰でメンタル的に来年に対する意気込みが強くなり、比較的気持ちよく(自主トレが)できてますね」

今年の五十嵐投手は本人が説明する通り、故障による戦線離脱などの影響もありわずか33試合の登板に留まり、2013年にソフトバンクに移籍してから最低の成績に終わった。さらにチームも3連覇を逃し、チーム一のベテランとしての責任感からか、肉体よりも精神的に相当なプレッシャーを背負い込んでいた。ウィンターリーグ参戦はそのプレッシャーから解放させることも目的の一つだったようだ。

五十嵐投手の決断は正しかった。ウィンターリーグではチームの勘違いもあり最後まで先発投手として起用されたのだが、精神的にリフレッシュできただけでなく、投手として様々な収穫を得ることができたのだ。

「今回のウィンターリーグでは、ちょっとフォームを変えたのでそれを固めたかったのと、変化球をどうしていくかというのを目標にしてました。それが先発をやることによって、プラスして肩の持久力だったり、新しい自分のスタイルというのも何となく見えてきた。この歳でそういう経験ができたのはすごく面白かったですし、刺激的で良かったと思いました」

先発として実戦で複数イニング投げることにより、普段中継ぎがブルペンでしか調整できない部分を、フォーム、変化球ともに実戦で経験を積むことができた。だがそれ以上に大きかったのが、短いイニングではなかなか気づくことができなかった投球自体のあり方を強く意識することができた。

「やはり先発と中継ぎでは全然違うとつぐつぐ感じましたね。長いイニングを投げることで気づけるポイントや新しい発見がすごく多かったです。これまで投げても2ニングだったのが、意外に(やり方次第で)3イニング、4イニング投げられるのがわかりました。

もちろん短いイニングで7回とか8回を投げるのが僕の理想ではありますけど、もしロングリリーフが足りなくなったら僕がそこにいこうと思ったらいけますし、新しい挑戦といいますか、今までできないと思っていたことをどんどんチャレンジして新しい発見ができたらいいなと思います」

10分足らずの短いインタビューではあったが、五十嵐投手から何度「新しい」という言葉が飛び出したことか。一流アスリートとして彼の意識に“現状維持”は微塵も存在していない。来年はさらに投球の幅を広げた、五十嵐投手のマウンド姿を見ることができるのだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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