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2017年殿堂入り発表でさらに色濃くなった不公平感

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
2017年の殿堂入りを果たした通算449本塁打を記録したジェフ・バグウェル氏(写真:ロイター/アフロ)

2017年の殿堂入り選手が18日、正式発表された。

選出されたのはジェフ・バグウェル氏、イバン・ロドリゲス氏、ティム・レインズ氏の3選手。今年は全米野球記者協会の有資格者442人が投票に参加したため、殿堂入りするためには全体の75%以上となる332票を獲得する必要があったが、バグウェル氏381票、レインズ氏380票、ロドリゲス氏336票を得ることに成功した。

レインズ氏は今年が投票対象になる最後の10年目でようやく75%をクリアし、バグウェル氏は7回目の投票での殿堂入り、そしてロドリゲス氏は資格を得た最初の投票で殿堂入りを決めた。

ちなみにメジャー通算歴代2位の601セーブを記録するトレバー・ホフマン氏は、投票2年目となった今年も5票届かずに殿堂入りを逃し、ロドリゲス氏と同じく今年初挑戦だったウラディミール・ゲレロ氏も15票足りずに殿堂入りを逃している。

ところでバグウェル氏、ロドリゲス氏の2人は、まさに“ステロイド時代”と言われたパワー全盛時代の中心選手だった。もちろん彼らが禁止薬物を使用していたと言っている訳ではないが、当時は禁止薬物の規制も甘く、まだMLBも当時の使用状況を完全に把握できていないのは確かなこと。2選手ともに現役時代は強靱な筋肉を備え、筋骨隆々の選手だったのは有名で、今回の彼らの殿堂入りは、ステロイド時代に身を置いた選手に対する記者達の認識が少しずつ変化してきたことを物語っている。

それを裏づけるように、これまで過去の投票で一度たりとも50%以上の得票を得られなかったバリー・ボンズ氏、ロジャー・クレメンス氏の2人がいずれも50%を超える票を獲得しているのだ。彼ら2人に関しては禁止薬物の使用が疑われた渦中の選手だけに、2人が殿堂入り対象になった5年前とは、記者の判断基準がかなり変わり始めているといえる。2人ともあと5年投票対象になることを考えると、殿堂入りできる可能性は決して少なくないように思う。

前述した通り、ステロイド時代は今尚グレーゾーンに包まれている。世に知られたルートで薬物を入手した選手だけが厳しい評価を受け、それ以外の選手たちがお咎め無しで殿堂入りしていくことに何か釈然としないものを感じていた。ステロイド時代があったことは紛れもない事実なのだから、そこで活躍した選手はすべて平等に扱うべきではないだろうか。

こうなってくると残念でならないのは、昨年限りで投票対象から外れたマーク・マグワイア氏だ。彼も現在の潮流ならば、もっと票を得られていたかと思うと何とも寂しい気持ちになってくる。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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