Yahoo!ニュース

MLB公式サイトが選ぶ最も過小評価されている選手は誰だ?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
遊撃手部門で選ばれたヤンキースのディディ・グレゴリウス選手(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

MLB公式サイトが26日、面白い記事をアップしている。

タイトルは「MLB'S ALL-UNDERRATED TEAM FOR 2017」。簡単に説明すれば、2017年シーズンに向け、各ポジションごとに球界で過小評価されている選手を選出して特集したものだ。果たしてどんな選手が選ばれているのか簡単に紹介していきたいと思う。

まず選考基準から説明しておこう。1)メジャー在籍2年以上であること、2)オールスター戦に一度も選出されていないこと、3)MVP、サイヤング賞、新人賞のタイトルで一度も投票トップ5に入ってことがないこと、4)過去に一度も総額1億ドル以上の契約を手にしていないこと──のすべてに当てはまる選手としている。

●先発投手:タナー・ロアーク投手(ナショナルズ)

MLBデビュー後先発36試合で18勝11敗、防御率2.70、229.2投球イニングを記録しながら、マックス・シャーザー投手の加入で先発から外れ中継ぎに回ることになった。しかし昨年はジョーダン・ジマーマン投手の離脱で先発に復帰すると、16勝10敗、防御率2.83、210イニングの成績を残している。

●中継ぎ投手:タイラー・ソーンバーグ投手(レッドソックス)

オフはクリス・セール投手ほど注目を集めなかったが、レッドソックスが素晴らしい中継ぎ投手の補強をしている。昨年は67試合に登板し、防御率2.15、9イニング平均12.1奪三振、0.94WHIP(1イニング辺りの被安打+与四球数)という好成績を記録している。ただずっと右ヒジに問題を抱えており、健康問題さえクリアできれば素晴らしい活躍を期待できる。

●捕手:JT・レアルムート選手(マーリンズ)

FanGraphs社が集計するWAR(選手の貢献度を現す指標の1つ)で、ナ・リーグではバスター・ポージー選手の4.0に次ぐ第2位(3.5)にランクしている。昨年は154安打を放ち、捕手としての球団記録を更新し、さらに捕手としてヤディエル・モリーナ選手の1218.1イニングに次ぐ1113ニングの守備機会を記録。さらに足も速く、過去2シーズンで28回で20回の盗塁に成功している。

●一塁手:ルーカス・デューダ選手(メッツ)

昨年は47試合の出場機会で打率.229に留まりながらも、過去4シーズンのwRC+(球場の特性などを加味しながら得点創出度を現す数値)で126を記録し、エイドリアン・ゴンザレス選手(124)、マイク・ナポリ選手(116)、アルバート・プホルス選手(116)、エリック・ホスマー選手(111)などの有名一塁手を上回っている。

●二塁手:ジョナサン・ビラー選手(ブルワーズ)

MLB4年目で自身最高のシーズンを過ごした昨年は、WARで遊撃手としては全体の8位にランクする活躍をみせた。19本塁打を打つ長打力を誇る一方で、昨年両リーグ1位の62盗塁を記録するスピードも併せ持つ。ただ記者によると、今年もこれだけの成績を残せるかについてはやや懐疑的のようだ。

●遊撃手:ディディ・グレゴリウス選手(ヤンキース)

引退したデレック・ジーター選手を引き継いだ2015年は顕著な活躍をしていないが、それでもOPS+(出塁率と長打率を足したOPSを球場の特性を加味しながら算出した数値)では前年のジーター選手を13ポイント上回る89を記録している。そして昨年は20本塁打、32二塁打、2三塁打を記録するなど、遊撃手としては平均以上の長打力を披露した。

●三塁手:ホゼ・ラミレス選手(インディアンズ)

昨年のシーズン開幕前まで控え選手として扱われていたが、期待外れだったホワン・ウリベ選手に代わり三塁に定着すると、2016年シーズン前まで通算OPSが.644だったにも関わらず.825と飛躍的に上昇させ、負傷で戦線離脱したマイケル・ブラントリー選手の穴を埋める活躍をみせた。

●左翼手:クリスチャン・イエリチ選手(マーリンズ)

2014年にゴールドグローブ賞、そして昨年はシルバースラッガー賞を獲得している。まだジアンカルロ・スタントン選手ほどの認知度はないもののスター選手に近づいている。守備には定評がある一方で、打撃力も着実に向上している。昨年は打球のフライ率が上昇している通り自己最高の21本塁打を記録した。

●中堅手:アダム・イートン選手(ナショナルズ)

過去3シーズン在籍していたホワイトソックスでOBP(出塁率).362、OPS+120を記録するとともに、二塁打、本塁打、盗塁ですべて平均2桁台を残している。2015年に肩痛を抱えていた影響もあり昨年はシーズン途中で右翼にコンバートされたが、2014年は本殺数で中堅手として5位にランクしている。

●右翼手:コール・カルフーン選手(エンゼルス)

2015年にゴールドグローブ賞を獲得する選手でありながら、このオフに合意した契約延長では3年で総額2600万ドル(約29億円)に押さえられた。それでも2012年にMLBデビュー以来、通算打率.266、69本塁打を誇り、過去3シーズンの平均WARも3.8を記録するなど、十分に評価されるべき成績を残している。

●指名打者:カルロス・サンタナ選手(インディアンズ)

2010年デビュー当初は捕手だったが、それから一塁手、三塁、指名打者などを経験。今年はエドウィン・エンカーナシオン選手の加入で指名打者よりも一塁での起用が多くなりそうだ。昨年は初めて30本塁打以上を記録したが、通算OBP.365やwRC+124は強打者として評価されるべき成績だ。

以上、一部ながら記者の寸評も交えながら全選手を紹介してみた。これまで日本ではあまり関心を集めてきた選手たちではないと思うが、ぜひ今シーズンは注目してみてはいかがだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事