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サイヤング賞投手フェリックス・ヘルナンデスがみせたWBCに臨む本気度

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
キャンプ初のブルペン入りで調整するフェリックス・ヘルナンデス投手

マリナーズは2月15日からバッテリー組がキャンプインしたが、2010年にわずか24歳でサイヤング賞を獲得したチームの大黒柱で、ベネズエラ代表としてWBCに出場するフェリックス・ヘルナンデス投手が、万全の体調でキャンプ地アリゾナに乗り込んできた。

昨年は「ちょっと細すぎた」との反省から、オフは同僚のロビンソン・カノ選手やネルソン・クルーズ選手も担当しているトレーナーの指導を受け、しっかり体づくりを行い約8キロの増量を行った。キャンプ2日目となる16日には同僚の岩隈久志投手と同じ組でブルペン入りし、シーズン中と変わらないような力強い球を投げ込み、9日から始まるWBC第1ラウンドにしっかり照準を合わせている。

「とにかく今回WBCに出場することをすごく楽しみにしている。国の代表として戦うのは自分にとって大きな意味があるし、現在の国情から僕らがWBCに優勝することで皆を喜ばせたいんだ」

ベネズエラが長らく政情不安になっているのは日本にも届いているだろう。前回のWBCが開催された4年前も、第1ラウンド直前に反米政権と知られた現職のウゴ・チャベス大統領が死去するという混乱の中での戦いを強いられた。その後チャベス政権を引き継いだニコラス・マドゥロ大統領も親中国路線を推し進めるなど、まだまだ不安を抱えた状態が続いている。

そんなベネズエラ国民にとって最大の娯楽の1つが野球だ。まさにベネズエラ代表のWBC王座獲得は、国民が待ち望む明るいニュースなのだ。

一時はオマー・ビスケル監督の突然の解任発表で、選手たちが次々に出場ボイコットを表明する内紛にまで発展したが、現在はビスケル監督の下、チームは一つに固まっているようだ。2009年の第2回大会以来の出場となるヘルナンデス投手が、チームの気持ちを代弁してくれた。

「自分たちはWBCに本気で取り組んでいる。今回は勝つチャンスがあるチームだと思っているし、勝つためだったら何だってやる覚悟だ」

今年4月で31歳になるヘルナンデス投手。WBC出場のリスクを考慮し、多くの実績あるベテラン投手たちが出場を辞退するする中、彼の覚悟が示す通り、WBCで無様な投球をしないようにしっかり準備を続けてきた。

「このオフは12月からベネズエラでトレーニングを始め、丸々2ヶ月間しっかり準備をしてきた。WBCで投げることがリスクだとは思っていないよ」

ちなみにヘルナンデス投手の言葉を補足説明しておくと、単にトレーニングをしていただけでなく、12月の22、29日に母国ベネズエラのウィンターリーグで実戦登板も行っている。

MLB屈指の最強右腕から次々に飛び出す前向きな発言を聞き、改めて今回のWBCに賭けるベネズエラ代表の意気込みを確認することができた。今後も出場選手に話を聞きながら他の各国代表チームの真剣度をチェックするつもりだ。

いずれにせよ今年のWBCが、例年以上の熱戦が期待できるのは間違いなさそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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