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カブスのエース左腕が分析するチーム連覇の可能性

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
昨年を含め過去3度のワールドシリーズ制覇を経験しているジョン・レスター投手(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

MLBは他の競技と比較しても、連覇が難しいとされている。それを物語るように、1998~2000年に3連覇を果たしたヤンキース以降、ワールドシリーズ覇者は毎年入れ替わっている。

この7年間でジャイアンツは3度ワールドシリーズを制覇しているが、2010、2012、2014年と1年おき。シーズンだけでも長丁場なのに、ワールドシリーズまで進出するとさらに1ヶ月半も余分に戦わなければならず、短いオフでの疲労回復および調整は、選手にとってかなりの負担になってしまうようだ。

レッドソックスで2007、2013年とワールドシリーズ制覇を経験してるレスター投手も、連覇の難しさは十分に理解している。

「単に翌年の調整が難しくなるだけでなく、ワールドシリーズを制覇したチームは基本的にFAなどで大量の主力選手を失ってしまう。2013年に勝った時も、かなりの主力選手がチームを離れていった。チーム状況は毎年変わってしまうものだ」

だがその一方で、レスター投手は、今年のカブスは状況がやや違うと指摘する。

「昨年もそうだったが、このチームは若くて才能ある選手が揃っている。彼らはそのままチームに残っていおり、主力選手でチームを去ったのは1人か2人だろう。現時点では皆が昨年並みの活躍ができることを祈るばかりだが、野球はそんなに簡単ではないのもわかっている。だが選手全員が健康さえ維持できれば、自分は(連覇できる)チャンスがかなりあると感じている」

レスター投手が説明する通り、昨年のワールドシリーズで出場枠に入った25人で、チームを去ったのはわずか6人しかいない。しかも主力級となると、野手では7試合すべてに出場したデクスター・ファウラー選手で、投手は抑えだったアロルディス・チャップマン投手の2人ぐらいだ。残り4人は控え野手とリリーフ投手だった。

逆にワールドシリーズに先発した4投手すべてと、7試合すべてに出場した野手7人のうち6人がチームに残留している。まさに昨年チームの核になった選手のほとんどが揃っている状態だ。そこに上原浩治投手やウェイド・デービス投手の強力リリーフ陣が加わっているのだから、みしろ選手層は厚みを増しているのだ。

この状況は、デレック・ジーター選手、ホルヘ・ポサダ選手、マリアノ・リベラ投手、アンディ・ペティット投手という若手選手が一気に主力選手として台頭し、長期に渡り黄金時代を築いたヤンキースにかなり酷似している。やはりレスター投手が暗示するように、今年のカブスは連覇できる可能性がかなり高いと言えそうだ。

「とにかくこのキャンプでは一生懸命練習して、チームとして良くなるために小さなことをしっかりやっていくしかない。あとはなすがままだし、どんなシーズンになるのか見守るしかない」

果たしてカブスがヤンキースのような黄金時代を築けるのか。今シーズンの戦いぶりに注目が集まるところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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