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本人が完全否定も拭いきれないAロッドの現役復帰

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
昨年8月に現役を引退したアレックス・ロドリゲス氏だが…(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

昨年8月に不振が続くアレックス・ロドリゲス選手は、ヤンキースのチーム事情から戦力外を通達され、そのまま現役引退に追い込まれた。

現役引退と同時にヤンキースの特別ゲスト・インストラクターに就任したロドリゲス氏は2月21日、キャンプ地に姿を現し、久し振りに背番号13番のユニフォームに袖を通しグラウンドに姿を現した。

引退直後から現役復帰の可能性が取り沙汰されてきたロドリゲス氏だが、この日行われた記者会見では他チームから契約オファーが届いていたことを認めた一方で、現役復帰については完全否定した。

「(現状に)感謝している。もしハル・スタインブレナー(オーナー)が自分を信じてチャンスを与えてくれていなかったら、自分はこの場にいなかっただろう。今は世界最高の組織の一員にいながら、家族と過ごす時間を持つことができている」

確かにロドリゲス氏の言葉を信じれば、現役復帰はまずないだろう。しかし本当にそうなのだろうか?昨年現役引退に追い込まれた当時、通算700本塁打にあと4本に迫った状況にあり、現役に未練を感じるような発言をしていたのは紛れもない事実だ。だからこそ昨年も引退直後からマーリンズへの移籍がまことしやかに報じられたりもしたのだ。

実は現役引退を発表した会見で、ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMが説明していることだが、ロドリゲス氏は2017年まで契約が残っており、引退しても特別ゲスト・インストラクターとして2100万ドル(約23億7000万円)の年俸が保証されているのだ。逆に言えば、現役復帰し他のチームと契約した場合、その年俸を不意にすることを意味するのだ。

ロドリゲス氏が言うように、獲得の意志を示し契約オファーを出したチームは間違いなくいただろう。しかし現在41歳になり、ピーク時より明らかに下降線を辿るロドリゲス氏に対し、ヤンキースが保証する額に見合うオファーを出したチームは皆無だったはずだ。つまりロドリゲス氏が今年現役復帰するとなると、明らかな損失が生じてしまうことになるわけだ。

ヤンキースとの特別ゲスト・インストラクターの契約が切れ、完全なフリーになったロドリゲス氏が果たして今回と同じ発言をするのか否か?自分以外にも同様の疑問に感じている米国人メディアは少なくない。

もう少し状況を静観するしかなさそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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