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カブス連覇は盤石!今年も健在な名将マドン監督の人心掌握術

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
自身初のワールドシリーズを制したマドン監督は今年も選手との対話を欠かさない(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

アリゾナ時間の2月20日夜に、ベテラン捕手のミゲル・モンテロ選手がツイート上に次のような投稿を行った。

そのツイートは何とマドン監督とのツーショット画像が付き、「2017年シーズンが待ち遠しい。また相手をやっつける準備はできている。自分たちの目標は最高のファンのためにワールドシリーズを連覇することだ」というものだった。

いくら選手との対話に長けたマドン監督とはいえ、プライベートで選手と食事をするのは希なことだ。翌21日のキャンプ練習終了後、マドン監督の会見では真っ先にこの話題に触れられると、指揮官は自らモンテロ選手を食事に誘ったことを明らかにした。

「まさに現在と将来についてのものだった。今年の彼の役割について話し合った。彼はそれを理解してくれ、目標としてくれた。彼はベテランらしくコーチ陣と選手を繋ぐ価値ある橋渡し役だ」

このキャンプでマドン監督は、いつものように参加選手全員と個別面談を行っている。もちろんモンテロ選手を含めてだ。しかし指揮官はそれでも足りないと感じたらしく、自ら食事に誘い、モンテロ選手が選んだイタリアン・レストランで大好きな赤ワインを傾けながら話し合いを行ったという。

モンテロ選手は昨シーズン中盤まで先発捕手として活躍し、捕手としては最多の86試合に出場していた。しかし中盤以降はメジャー初昇格したウィルソン・コントレラス選手の台頭で出場機会が減り、肝心のプレーオフに入るとジョー・レスター投手の専属捕手だったデビッド・ロス選手に続く“第3の捕手”になっていた。

今年はコントレラス選手が中心になるのは自明の理。しかもロス選手が現役引退したものの、昨年は負傷で長期離脱していたカイル・シュワバー選手にもマスクを被らせる計画で、モンテロ選手がベンチを温める機会は相当に多くなりそうな状況だった。そんな待遇の変化を余儀なくされたモンテロ選手に対し、わだかまりを解くためにもマドン監督は手を差し延べたというわけだ。

「お互いが話し合いたかった。その日の終わりには2017年に切り替わった。新たなページが開き、2017年の新たな目標に向かった。お互いがそれに合意できた。自分はその一員になりたいし、信頼してほしい。そして自分はこれまでとは違った方法でチームを助けられるし、自分の役割も理解していると(マドン監督に)伝えた。

今日朝を迎えると、最高の気分だった。練習でも自分の態度が変わっていたよ。とにかく楽しむことだ。自分たちは連覇を狙える特別なチームだ。そのためにもチームが一つにならなくてはいけないんだ」

マドン監督の粋な計らいで、モンテロ選手は控えという役割を受け入れ、新たなモチベーションを抱くことができた。

チーム内のほころびを一瞬たりとも見逃さないマドン監督。今年もキャンプで着実に戦うチームを築き上げていきそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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