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ダイヤモンドバックスの中後がオープン戦好投の翌日にマイナー降格された舞台裏

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
3月4日のパドレス戦で好投しながら翌日マイナー降格が決まった中後悠平投手

2月24日に「現地取材だから肌で感じることができるダイヤモンドバックスが寄せる中後悠平への期待感」という記事をアップさせてもらった。この記事を一読してもらった人に対し、今回は現場で何が起こったのかを説明する必要があると感じ、続報を記したいと思う。

記事にもあるように、キャンプ当初から首脳陣が中後投手の投球を注視していたのは紛れもない事実だ。それは記事中のトリー・ロブロ監督のコメントからも十分に感じてもらったと思う。しかし結果として中後投手は、3月5日にチームが最初に行ったカットの1人に入り、早々にマイナーに降格することになった。

これが何を意味するかと言えば、これから先発投手たちがオープン戦登板3巡目に入り投球イニング数が増えていく中、徐々にリリーフ投手たちの登板機会が減っていく過程で、これ以上中後投手に登板を与えるのが難しいと判断されたためだ。それはつまり現時点で、開幕メジャー入りを争う中継ぎ左腕の有力候補に入っていなかったということになる。

だが今回のマイナー降格が、中後投手へのチームの期待感がなくなったというわけではないのだ。そこがMLBという契約社会の難しさでもある。

元々キャンプ開始前日まで、メジャーの中継ぎ左腕の座を争そうのは中後投手を含めて5人だった。そのうち40人枠に入っているのが2人、他3人は招待選手として参加することになっていた。

しかしキャンプが始まると、チームが動いた。まずキャンプ初日にMLB在籍8年のブライアン・マティス投手、さらにはその数日後に同13年のホルヘ・デラロサ投手と、2人のベテラン左腕とマイナー契約を結び、招待選手としてキャンプに招聘したのだ。

元々招待選手で参加していた中後投手を含めた3人は皆、MLB未経験で実績不足は否めなかった。そこにベテランの2投手が加わったのだから、必然的に彼らを優先的にオープン戦で起用し、彼らの投球が通用するか否かを見極める必要があったというわけだ。

また今回マイナー降格が決まったのは、3度のオープン戦登板で中後投手が首脳陣にある程度のインパクトを与えていたからこそ、という側面もある。マイナー・キャンプを翌日に控えた3月6日、マイナーリーグの投手すべてを管轄するピッチング・コーディネーターから、中後投手は以下のように激励されている。

「オープン戦でいい投球をしたのは知っているし、彼ら(メジャー首脳陣)は君のことを相当に気に入っている。マイナーに降格したからも、まだキャンプ中にメジャーのオープン戦で投げる機会もあるかもしれない。しっかり投げていれば昇格できるチャンスは必ず訪れるだろう」

昨シーズンのダイヤモンドバックスは中継ぎ左腕が安定せず、計6人の投手を入れ替えながら起用してきた。前述のベテラン左腕2人も実績十分とはいえ未知数の状態で、今年も左腕投手を総動員して戦っていく公算が高い。ピッチング・コーディネーターが説明しているように、中後投手もその1人に入っているのだ。

あとは中後投手次第だ。シーズン開幕から昨年並みの投球を続けているようなら、吉報は意外に早く届くことになるかもしれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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