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なぜカブスが川崎宗則をこの時期に解雇したのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
実は昨年も同じ時期に解雇処分を受けていた川崎宗則選手(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

昨年はシーズン終了までカブスに在籍していた川崎選手だが、実は昨年のキャンプ中も一度解雇処分になり、その日の内に再契約に合意していたことをご記憶の方も少なくないはずだ。実は今回の解雇処分も、まったく“同じ理由”によるものなのだ。

MLBの規則によると、MLB在籍年数(あくまで25人枠に入っている期間。25人枠扱いで故障者リストに入っている期間も含む)6年以上のFA資格選手で、前年を40人枠もしくは60日間の故障者リストでシーズンを終えた選手がマイナー契約を結んだ場合、所属先チームは当該選手を開幕ロースター25人に加えるか、故障者リストに入れる計画がなければ、シーズン開幕5日前に当該選手を解雇しないと選手に対し自動的に10万ドルのボーナスを支払わなければならないのだ。

川崎選手はまだMLB在籍年数が6年を超えていないが、MLBが認める外国リーグ(もちろんNPBを含む)でFA資格を得たり、ポスティング制度でMLBに移籍する選手は、すべてFA有資格選手の扱いを受ける。つまり川崎選手はMLB挑戦1年目からFA資格選手と同じ待遇の選手であるため、これまでシーズン終了後にFA選手になるという条項を加えるなどして、MLB在籍年数が6年未満でも毎年FA選手として契約交渉を繰り返してきたのだ。

つまり今回のカブスの措置は、川崎選手を開幕ロースター25人に加える予定はなく、さらに10万ドルのボーナスを支払う意志がなかったことを意味しているわけだ。すでに年俸30億円以上の選手が続出しているMLBでやや貧乏くさい話に聞こえてしまうが、これも厳しい“契約社会”であるMLBの現実なのだ。

これはカブスだけが特別なわけではなく、他のチームもベテラン選手たちに同様の厳しい措置を行っている。実はここ数日で、ジョン・ニース投手、ジェームス・ローニー選手、ジョ・ネイサン投手、マット・アルバース投手、ライアン・ハニガン選手等々、名の知れたベテラン選手たちが川崎選手と同じ理由で次々に解雇処分を受けている。

ただ川崎選手にとって昨年との大きな違いは、今回は解雇された後未だカブスと再契約を結んでいないということだ。カブス側はマドン監督が「できれば彼が戻ってくるのを期待している」と説明しているように、川崎選手との再契約を望んでいるようだ。その一方で川崎選手は「カブスも選択肢の一つ」としながらも、「自分に合ったチームを探してそこでプレーすることを考えている」と移籍に前向きな姿勢を示している。

川崎選手は現在、FA選手としてMLBのみならずNPBとも交渉できる立場にある。果たして所属先はどこになるのか。川崎選手の最終決断を待つしかない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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