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離日決定のバレンティン、球団史上初の“偉業”はなるか?

菊田康彦フリーランスライター

東京ヤクルトスワローズのウラディミール・バレンティン選手が、9月16日に神宮球場で行われた阪神タイガース戦の8回に今季31号ソロを放ちました。これでセ・リーグのホームランダービーでトップを走る広島東洋カープのブラッド・エルドレッド選手との差はわずか2本となりましたが、バレンティン選手にとってはこれが今シーズン最後のアーチになってしまうかもしれません。

15日の阪神戦では新記録達成1周年を記念してメダルセットが配られたが…
15日の阪神戦では新記録達成1周年を記念してメダルセットが配られたが…

バレンティン選手は来日した2011年から3年連続でセ・リーグの本塁打王を獲得。昨年は60本塁打の年間新記録も樹立しましたが、夏場以降は左足のアキレス腱痛に悩まされていました。その痛みは今シーズンになっても収まらず、6月半ばから約1カ月戦列を離れると、8月30日からは7試合連続でスタメンから外れ、代打に専念したこともありました。

そのため、バレンティン選手がシーズン終了後にも自宅のある米国で検査を受け、必要なら手術に踏み切ることも視野に入れていたのは、先日スポーツナビに寄稿したコラム『助っ人初4年連続キングへ、バレ砲の戦い ~燕軍戦記2014~VOL.5』にも書いたとおりです。ところがヤクルトの衣笠剛球団社長兼オーナー代行が、シーズン終了前にチームを離れることを認めたため、バレンティン選手は近日中にも渡米する考えを明らかにしました。

それでも「試合に出る限りはベストを尽くす」と言うバレンティン選手の集中力には、この16日の試合でも並々ならぬものがありました。7回の守備ではレフト前にフラフラと上がった飛球をスライディングキャッチでグラブに収めると、8回の打席では阪神・歳内宏明投手のフォークボールを右中間スタンドに放り込み、一時は14本もの大差をつけられていたエルドレッド選手に2本差まで迫りました。試合後には「ファンが(ホームラン王を)期待しているのは分かるが、オレの野球人生は今年で終わりじゃない。それにチームが最下位という状況でホームラン王にこだわっても意味がない」としながらも、「チャンスがある限り頑張る。明日は(ホームランを)2本打つよ」と、外国人選手としては史上初となる4年連続本塁打王にも、わずかながら望みをつないでくれました。

気になる離日の時期に関して、バレンティン選手自身は「近いうちに」と話しただけで明言はしませんでしたが、小川淳司監督は「規定打席をクリアしたらということになるんじゃないか」との見方を示しています。16日の試合が終わった時点で、バレンティン選手はシーズン最終の規定打席まであと「15」で、順調に行けば19日から東京ドームで行われる読売ジャイアンツとの3連戦で到達する見込みとなります。

実はこの「規定打席到達」には大きな意味があります。バレンティン選手の出塁率は.420で、丸佳浩選手(広島)の.405を引き離してリーグトップ。離日までにシーズンの最終規定打席をクリアすれば、昨年に続いて連盟表彰の対象である「最高出塁率」のタイトルを手にする可能性があるのです。過去にヤクルトでこのタイトルを獲得したのは、バレンティン選手のほかにトーマス・オマリー選手(1995年)、ロベルト・ペタジーニ選手(1999、2001年)、青木宣親選手(2007、2009年)がいますが、2年連続の受賞はなし。バレンティン選手がシーズン終了を待たずにチームを離れるのは残念ですが、この球団史上初の“偉業”には期待したいところです。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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