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セーブ王バーネット、ポスティングによるメジャー移籍は「スワローズに対する感謝の気持ち」 会見一問一答

菊田康彦フリーランスライター

11月2日、東京ヤクルトスワローズは記者会見を開き、守護神として今季のセ・リーグ優勝に大きく貢献したトニー・バーネット投手が、ポスティング制度によりメジャーリーグ移籍を目指すことになったと発表しました。

都内の球団事務所で行われた会見には、小川淳司シニアディレクター(SD)と共に、この日の夕方に日本を発つ予定だったバーネット投手本人も出席。まずは小川SDから、入札額が50万ドル(約6000万円)に設定されたことや、球団としては引き続き残留交渉を行うことなどが伝えられ、続いてバーネット投手のあいさつ、そして質疑応答となりました。バーネット投手のあいさつと、その後の一問一答は以下のとおりです。

球団事務所で行われた会見では終始、硬い表情だったバーネット
球団事務所で行われた会見では終始、硬い表情だったバーネット

小川SD「気持ちは非常にありがたい」

(バーネット、以下B)自分が夢に描いていた、メジャーリーグでプレーするチャンスをいただけたことに感謝しています。そしてこの6年間、スワローズにサポートしていただいたことにも、とても感謝しています。ありがとうございました。

──フリーエージェント(FA)ではなく、ポスティングを選んだ理由は?

(B)ポスティングを選んだのは、これまでスワローズが自分にしてきてくれたことに対する感謝の気持ちもありまして、ただ単に「さよなら」という形でFAになるよりは、ポスティングで自分の道を決めていきたいと思いました。

──決断したのはいつ?

(B)いつというのは覚えてないので、SDに聞いていただいたほうがはっきりした日付はわかると思います。自分たちが優勝へ突き進んでいた時で、そちらに集中していたので正確な日付は覚えていないです。

──(小川SDに)申し出はいつ?

(小川SD、以下O)10月14日に代理人のほうからそういった話がありました。

──それに対して。

(O)当然、残留要請はしなければいけないというふうには、その時点では考えていましたけど。

──残留が一番だと思うが、ポスティングなら移籍しても球団にもメリットはある。

(O)その後、本人との話し合いの中でそういった結論に達したということです。

──FAでなく、こういう形で球団に感謝の意を示したことについては。

(O)本人からの希望なので、会社とすればそういった気持ちというのは非常にありがたいなというふうに思います。ただ、(移籍となれば)戦力的にかなりダウンすることは当然、考えなければいけないことですが。

──引き続き残留要請をしていく?

(O)引き続き、はい。

──(バーネット投手に)6年間応援してくれたファンへのメッセージは。

(B)言葉に表せないぐらい、ファンの皆さんには感謝しています。この6年間、ありがとうございました。そして自分の家族、娘もたくさん可愛がっていただいて、娘は覚えていないかもしれませんが、いつの日か写真だったりビデオだったりを見せてあげたいと思います。そして、このプレーオフ(クライマックスシリーズ、日本シリーズ)でのお客さんの大きな声援というのは忘れません。とても嬉しかったです。ありがとうございます。

メジャーでのプレーは「子供の頃からの夢」

──今後の手続きについて。

(O)NPBには11月5日に申請する予定です。

──MLBでのプレーは来日してからも夢だった?

(B)子供の頃からの夢ではありました。日本でプレーしている間はそこに集中して、日本で頑張っていくっていう形だったんですが、メジャーリーグでプレーするというのはずっと頭の片隅にはありました。こういう形で今、ここに座ってメジャーに挑戦するというふうに言えていること自体、幸運だと思っていますし、この6年間スワローズでやってきた結果がこういう形になっているのかなと思っています。

──日本で学んだことや、自分にとって成長につながったことは?

(B)(来日2年目に)先発からリリーフに変わったりというのもありましたし、細かい話をすると時間がかかってしまいますが、今の自分があるのはコーチの方のサポートがあったからで、それが一番大きなものだったと思います。

──(小川SDに)ポスティングなしに残留交渉する考えは?

(O)残留交渉は7月の中旬ぐらいから始めてました。ポスティングうんぬんっていうことではなく、単純にヤクルトに残ってほしいというような交渉は、その頃から続けていました。

──最終的にバーネット投手の意向を汲んだ?

(O)本人の要望でそういう形になりましたけど、引き続き残留交渉っていうのは、11月30日までの保留者名簿に載せて行っていくということには変わりはないです。

──(バーネット投手に)メジャーリーグへの移籍が決まった場合、希望は抑えか先発か。

(B)日本にいても毎年、春のキャンプでどこのポジションになるかっていう話をしてきていると思うんですが、自分は与えられた役割を果たせればというのがあるので、そこは今の段階ではまだわかりません。メジャーリーグの野球はまたちょっと違うと思うので、そこにアジャストしていって、自分がどこにフィットするかっていうのを見ていきたいと思っています。

2006年にアリゾナ・ダイヤモンドバックスからドラフト10巡目で指名されてプロ入りしたバーネット投手ですが、メジャーのマウンドに上がることなく2010年にヤクルトへ入団。間もなく32歳になるということもあり、このチャンスを逃したらメジャーで投げるチャンスは2度とないかもしれないと考えても不思議ではありません。小川SDも話していたように、退団となればヤクルトとしては大きな戦力ダウンとなりますが、優勝という大きな置き土産を残し、なおかつ球団にも何がしかのメリットがあるようにあえてポスティングという手段を選んだバーネット投手を、気持ちよく送り出してあげたいものです。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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