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「寂しい気持ちあるが、次のステップに向かって」ヤクルト田中浩、異例の「退団会見」全文

菊田康彦フリーランスライター

まさに”サプライズ”だった。10月11日午後、都内の東京ヤクルトスワローズ球団事務所で、急きょ開かれた記者会見。それは7日付で球団から戦力外通告を受け、今季限りでの退団が決まった田中浩康(34歳)の「退団会見」であった。以下はその代表質問における一問一答。

晴れやかな表情で、異例の「退団会見」に臨んだヤクルト・田中浩
晴れやかな表情で、異例の「退団会見」に臨んだヤクルト・田中浩

小川監督時代の「キャプテン」経験を今後に生かしたい

──田中選手に。今の率直な気持ちは?

(田中、以下T)12年間お世話になり、球団の方々には家族のように温かく接してもらったので寂しい気持ちはありますが、決断したので次のステップに向かって頑張っていきたいと思います。

──小川淳司シニアディレクター(SD)に。退団の経緯は?

(小川、以下O)田中選手にはとにかく後進の指導をということで、(コーチ就任を)お願いしていました。その交渉の中で、彼の現役にこだわる気持ちが非常に強く、断念したというところです。

──田中選手に。退団という結論に至った一番の理由は?

(T)現役続行への気持ちが強く……その気持ちが一番です。現役選手にこだわっての結論です。

──ヤクルト在籍12年間の思い出は?

(T)厳しい先輩に出会って、あとは底抜けに明るい後輩たちと一緒にプレーしたことはプライスレスな経験なので、僕の人生の財産になると思ってます。あとは、今はSDですけど、小川監督の時代にキャプテンという経験もさせてもらったので、その経験を今後にも生かしていきたいという気持ちです。

良い時も悪い時もファンの温かい声援が励みに

──2012年まではレギュラー。その後の4年間はどんな思いで?

(T)うーん……山田(哲人)はリスペクトしてます、はい。

──出場機会が少なくなってきた中で、昨年は外野手にも挑戦。

(T)新しい挑戦をすることも学んだので、その経験も次に生かしていきたいというか、大事にしていきたいと思ってます。

──今後はいろいろな選択肢がある中で、国内、海外などどこでプレーを?

(T)とにかく現役のプレーヤーにこだわっているので、まずは手を挙げて、どういう話があるのかわかりませんが、その時のために今は備えたいと思います。

──来月には12球団合同トライアウトも。受験の意思は?

(T)今のところ受けないつもりではいますが、どういう状況になるかわからないですし、(埼玉・戸田の球団)施設も貸していただけるということなので、万全の状態というか、しっかりと準備したいとは思います。

──最後にこれまで在籍したヤクルト、そしてファンへのメッセージを。

(T)12年間ヤクルトにはお世話になりましたけども、1つのキャリアの節目として感謝の気持ちを伝えたいと思います。ヤクルト球団の方々はもちろんヤクルト本社、そしてフジサンケイグループの方々にもたいへんお世話になりました。そして何よりスワローズファンの皆さんにも、良い時も悪い時も温かい声援を送ってもらったので、それは本当に嬉しくて、励みになっていました。これからどういう形になるかわかりませんが、しっかりとこの経験を生かして頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。

現役続行の意志を貫いた結果とはいえ、戦力外を通告された選手が「退団会見」を行うというのは、過去にもほとんど例がないはずだ。

「僕は(ヤクルトに)12年間お世話になったので断る理由が1つもなく、サプライズでしたけど、ありがたくこの場をいただきました。球団には本当に感謝の気持ちですね。次への激励と受け取っています」

田中自身は、球団の計らいにより当日になって決まったこの会見について、そう話している。“異例”の会見は、これまでチーム一筋に12年プレーし、キャプテンまで務めた選手に対する、ヤクルトからのはなむけと言っていいだろう。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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