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後ろ足がマヒしたペット犬の脊髄に鼻腔内の細胞を移植したら走り回れるようになった 英ケンブリッジ大発表

木村正人在英国際ジャーナリスト

ケンブリッジ大学などの研究チームが、鼻腔内の細胞を採取して培養し、脊髄損傷で後ろ足がマヒした犬の脊髄に移植したところ、歩行機能が回復した。研究成果は医学雑誌ブレインに掲載され、英メディアが一斉に報じた。

東京都神経科学総合研究所のホームページによると、現在、細胞移植で最も効果があるとされているのは、末梢性のグリア細胞である嗅神経被覆細胞(olfactory ensheathing cell、OEC)。OECは鼻粘膜の嗅上皮で生まれ、嗅球に侵入し、嗅神経のシナプス再構成に重要な働きをするといわれている。

英BBC放送によると、ケンブリッジ大学などの研究チームは、脊髄損傷で後ろ足がマヒしたペット犬34頭から採取したOECを研究室で数週間培養したあと、それぞれ同じ犬の脊髄に移植した。その結果、多くの犬の前足と後ろ足をつなぐ脊髄の神経線維が再生し、後ろ足の歩行機能が大幅に回復した。

しかし、後ろ足から距離がある脳につながる神経線維までは再生せず、歩行する際に生じる左右の揺れは調整できなかった。

目覚ましく歩行機能が回復したダックスフントの飼い主は「庭を走り回れるようになった」と目を丸くしている。

次は人間の脊髄損傷患者への応用に期待がかかるが、ケンブリッジ大学などの研究チームは「人間の運動機能を少し回復させる可能性があると確信しているが、手の運動機能や膀胱(ぼうこう)や体温調整など複雑な人間の機能を回復させるための応用の道のりはまだ遠い」と話している。

東京都神経科学総合研究所のホームページによると、すでに世界各地で臨床応用のプロジェクトが始まっているが、動物実験で見られたような機能回復の効果は上がっていないという。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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