Yahoo!ニュース

日本の「世界平和度指数」は尖閣危機で3位から8位に

木村正人在英国際ジャーナリスト

国際研究機関「経済・平和研究所」は18日、世界162カ国・地域の平和度を測定した2014年の「世界平和度指数」を発表。日本は08年、最高3位を記録したが、沖縄県・尖閣諸島をめぐって中国との緊張が高まり、ランクを8位まで落としている。

平和度ランキングのトップ10は――。

(1) アイスランド、08年から7年連続で1位

(2) デンマーク

(3) オーストリア

(4) ニュージーランド

(5) スイス

(6) フィンランド

(7) カナダ

(8) 日本(前年は6位)

(9) ベルギー

(10) ノルウェー

ワースト11

(1) シリア

(2) アフガニスタン

(3) 南スーダン

(4) イラク

(5) ソマリア

(6) スーダン

(7) 中央アフリカ

(8) コンゴ民主共和国(旧ザイール)

(9) パキスタン

(10) 北朝鮮

(11) ロシア

「経済・平和研究所」の世界平和度指数2014年マップ
「経済・平和研究所」の世界平和度指数2014年マップ

赤いところが危険な国で、肌色が平和度が低い国、黄色が中間、薄緑色が平和な国、濃い緑色はとても平和な国を意味している。日本はとても平和な国だ。

ロシアのプーチン大統領によってクリミア編入を強行されたウクライナは前年の111位から141位まで急落している。

中国は108位。北朝鮮の核・ミサイル開発、東シナ海や南シナ海での中国の拡張主義的な行動がアジアの平和度を押し下げている。

昨年の中国による東シナ海での防空識別圏(ADIZ)設定後、米国は日米安保条約に基づく「尖閣防衛義務」を明言。日米両国は同盟力強化による地域の安定を目指している。

そのためには、限定的に集団的自衛権の行使を容認した上で、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」を改定、尖閣有事に備えて緊急事態対処計画を日米間で共有しておく必要がある。

米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のマイケル・グリーン元国家安全保障会議アジア上級部長は13日、ロンドンで講演した際、近く日本政府は集団的自衛権をめぐる憲法解釈を見直すとの見通しを示した。

下の図(筆者作成)が示す外国の領土・領空・領空内または日本からかなり離れた公海上で武力を行使(赤色の部分)するためには憲法改正が必要だと筆者は考える。

(筆者作成)
(筆者作成)

その他の青色の部分については、武力行使に当たらない武器使用も含めて柔軟に解釈すべきだ。現行憲法が禁じているのは、あくまで「外国での武力行使」なのだ。

集団的自衛権を認めれば「日本は戦争をする国」になるという議論は常軌を逸している。世界広しといえど、国連憲章でも認められた集団的自衛権の行使を認めていないのは日本だけだ。

(筆者作成)
(筆者作成)

なぜ、日本の平和度が最高3位から8位まで下がったのか、考えてみてほしい。

「尖閣防衛」をめぐりグレーゾーンが残っていた日米同盟を揺さぶって日米間にクサビを打ち込むため、中国が尖閣諸島への圧力をエスカレートさせてきたからだ。

このグレーゾーンを残したまま置いておくと、ますます中国の圧力は増すと考えるのが自然だろう。

前回のエントリーでも指摘したが、中国と同盟を結ぶ国は「北朝鮮とカンボジアだけ」(米シンクタンク、ブルッキングス研究所のブルース・ジョーンズ上級研究員)だ。

習近平国家主席になって「強兵路線」を突き進む国に日本の安全保障を委ねようと唱えるのは、国際社会の現実を無視している。中国との経済関係はもちろん大切だが、その前提として、水も漏らさぬ日米同盟を構築することが急務である。

戦争を起こすのは、衰退期に入った国ではなく、これから台頭していく国である。少子高齢化が急激に進む日本が戦前の軍国主義に回帰するという主張も歴史を無視している。

移行期に入った世界を安定させるためには、西側諸国が米国を中心に結束して現行の国際秩序を維持、その中で中国やインドなど新興国に平和裏に発展してもらう必要がある。

今のままでは、中国はトウ小平氏の遺訓である「韜光養晦(とうこうようかい、時が来るまで力を蓄える)」の平和台頭路線には戻らない。中国を押し戻すためには、どう考えても日米同盟の強化が不可欠だ。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

木村正人の最近の記事