原爆投下から70年 ノーベル平和賞候補にヒロシマ・ナガサキの語り部も アジアでは核軍拡進む
ノーベル平和賞の予想では定評があるノルウェーの公共放送局NRKは8日夜、今年の平和賞受賞者に、反戦を訴えてきたローマ法王フランシスコか、ヒロシマ、ナガサキの悲劇から今年でちょうど70年になるのに合わせて核軍縮の交渉者や活動家に授けられる可能性があると報じている。
欧州の難民危機も俎上にのぼっているという。273の個人と団体が候補になっている。
気さくな人柄と人間への深い理解で世界的に人気のあるローマ法王フランシスコはノーベル平和賞を超越した存在だ。ノルウェーのノーベル賞委員会がその功績をたたえるというのはおこがましいような気もする。
ロシアとウクライナの停戦交渉と欧州の難民危機でリーダーシップを発揮したドイツのメルケル首相の名前も上がっているが、12年に欧州連合(EU)に授賞されたばかりなので「また欧州」という声が上がりそうだ。
広島、長崎への原爆投下から70年の今年、欧米など6カ国とイランは同国の核開発をめぐり歴史的な合意に達した。今年の平和賞は「核兵器廃絶のための国際キャンペーン(ICAN)」、それともケリー米国務長官とイランのザリフ外相なのか。オバマ米大統領に09年、平和賞が授けられているので、ケリー長官が選ばれるとオバマ政権から2人目ということになる。
14年のウィーン会議で出された核兵器の禁止に向けた「オーストリアの誓約(プレッジ)」を主導した同国のクルツ外相か。しかし反核に取り組んできた長さでは日本人の語り部に平和賞が授けられてもおかしくない。ノルウェーの公共放送局NRKは2人の名前を挙げている。
1人がサーローせつこさん。13歳のとき徴用された広島市内の陸軍施設で被爆した。終戦後の1950年代にカナダへ移住し、ソーシャル・ワーカーとして働きながら、自らの原爆体験と核兵器廃絶の必要性を英語で訴え続けてきた。
もう1人が谷口稜曄 (たにぐち・すみてる)さん。長崎の郵便局に勤務、集配中に被爆した。国内外で被爆者の実態と核兵器廃絶を訴えてきた。
今年、北朝鮮が新たなウラン濃縮施設を稼働させ、ウラン型核兵器を年間3.2個製造できる能力を獲得した可能性があるという分析やパキスタンが年間20個の核弾頭を製造できる能力を持っているとする報告書が発表された。
今後10年の間にパキスタンが保有する核弾頭数は350個近くに達する可能性がある。このシナリオ通りに進めば、パキスタンは米露両国に次いで世界3番目の核大国になる。カシミール紛争を抱えるインドも核軍拡の道を選ぶシナリオは否定できない。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、米露両国が核軍縮を進める中、中国だけが2014年から核弾頭数を10個増やしている。パキスタンが核軍拡に突き進めば、インド、中国へと連鎖反応を引き起こしかねない。
現在、核保有国は9カ国。内訳は、国連安全保障理事会の常任理事国である米国、ロシア、フランス、中国、英国の5カ国。核拡散防止条約(NPT)に未加盟または脱退したパキスタン、インド、イスラエル、北朝鮮の4カ国。
SIPRIの統計によると、ロシアが昨年から500個減らして7500個。米国も40個減らして7260個。その一方で、米露両国は核兵器の近代化に取り組んでいる。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナからクリミア半島を併合した際、核兵器の使用を準備していことを明らかにしている。
筆者がノーベル賞委員会ならケリー長官、ザリフ外相、EUのアシュトン前外務・安全保障政策上級代表をはじめ、語り部のサーローせつこさん、谷口稜曄さんたちへの合同授賞とし、ローマ法王フランシスコにも特別授賞するのだが。
(おわり)