難民のせい? ドイツの集団性的暴行が大波紋

黙殺されたケルンの集団性的暴行に抗議する女性(写真:ロイター/アフロ)

性的暴行がまかり通ったニューイヤーズ・イブ、レイプ被害も

ドイツ西部ケルンでニューイヤーズ・イブ(大晦日の夜)に、100人以上の女性が性的暴行や窃盗の被害にあった事件が大きな波紋を広げています。多くの女性が20~30人の男に囲まれ、突き回されたり、胸や股間をまさぐられたりしました。洋服のフードに爆竹を放り込まれた女性もおり、少なくとも1人はレイプされたそうです。

これまで121件の被害届が出され、その4分の3は性的暴行でした。現場には数千人の男が集まっており、16人の容疑者が特定されましたが、誰1人として逮捕されていません。被害者や警察官の証言では「アラブか北アフリカ出身の男性で年齢は10代後半から30代に見えた」「英語でもドイツ語でもない言葉を話していた」そうです。

同じような事件は北部ハンブルクや南西部シュツットガルトでも起き、ハンブルクでは30件の被害届が出されています。

ドイツに昨年流入した難民は100万人

ドイツには昨年、シリアやアフガニスタンなどからの難民が100万人以上やって来ました。犯人が特定されていないため、集団による性的暴行を難民に結びつけることは極めて危険です。政治家もメディアも警察も事を荒立てるのを恐れて、事件について口を閉ざしました。事件を報じなかった公共放送はソーシャルメディアで謝罪しました。

しかし、百数十人の女性がケルン中央駅など公の場所で、数千人の集団に囲まれ、胸や股間をまさぐられるというのは大変な事態です。被害にあった女性が次々と証言し始めたことで事件は大きな問題になりました。1月5日には女性を中心に約400人がケルンで抗議デモを行いました。

女性たちのプラカードには「メルケルさん、あなたはどこに隠れているのでしょう。何か、発言することはないのでしょうか。この事件は私たちをおののかせています」という怒りが書き連ねられていました。「女性が夜、安心して外を歩けなくなるなんて」という不安が広がっています。

ケルンの女性市長レーカーが、事件の再発防止のため信頼できる知人と一緒に行動するなどのガイドラインを提案したところ、「問題は性的暴行を行う方にあるのに、女性に注意を呼びかけるなんて、筋違いもいいところ」という批判が沸き起こりました。

また、ソーシャルメディアにはアラビア語で「後ろ指を刺されないように普段から振る舞っているのに今回の事件ですべてがぶち壊し」「これが中東・北アフリカで暮らす女性の日常だ。その蛮行がドイツにもやって来た」と性的暴行を非難する書き込みが相次いでいるそうです。

メルケル首相「難民は明日へのチャンス」

ドイツの首相メルケルは大晦日に「大量の難民流入と社会統合が引き起こす問題に正しく対処すれば、必ず明日へのチャンスになります。我々は試練の時を生きています。ドイツはそれに対応できる強い国です」と改めて難民を受け入れる覚悟を示しました。

しかし、事件について一転、厳しい姿勢を見せざるを得ませんでした。

「大晦日の夜に起きたことを許容することはできません。これはドイツが絶対に受け入れることができない嫌悪感を引き起こす犯罪です。我々は、国外追放に関して必要なことをすでに行っているのか否かを何度も何度も繰り返し検証しなければなりません。我々の法秩序に従う準備のない人たちにシグナルを送る必要があります」

与党からも「強制送還のハードルを下げよ」の声

ドイツでは禁錮3年の有罪が確定した場合に初めて難民の地位が問われることになります。「この期間を1年に短縮してはどうか」「いや、今回のような犯罪行為を行った場合、ドイツでの居住権を直ちに剥奪すべきだ」という声がメルケル政権内部や政権を支持する姉妹政党・キリスト教社会同盟(CSU)からも上がっています。

「西洋のイスラム化に反対する欧州愛国主義者」(PEGIDA、ペギーダ)や単一通貨ユーロ圏からの離脱を唱える新興政党「ドイツのための選択肢(AfD)」はここぞとばかりに「メルケルが難民受け入れを表明するから、こんな事件が起きるのだ」と批判を強めています。

しかし本国に強制送還すると死刑になったり長期投獄されたりする人を国外追放するわけにはいきません。まだ誰が集団性的暴行を起こしたのか、その背景は何かなど、分からないことが多すぎます。まず事件の全容を解明して、再発防止のためには何が有効か徹底的に検討する必要があります。

昨年は難民が大挙して欧州に押し寄せ、「難民危機」と言われました。しかし本当の正念場はこれからです。

(おわり)