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岡崎フル出場でレスター「勝利の方程式」復活 英メディアも絶賛

木村正人在英国際ジャーナリスト
クリスタルパレス戦で今季初ゴールを決めた岡崎選手(写真:アフロ)

サッカーのイングランドプレミアリーグで22日、レスターの岡崎慎司選手がクリスタルパレス戦にフル出場し、今季初ゴールを決めました。日本人選手としては香川真司選手(現・独ドルトムント)と並ぶリーグ6点目のタイ記録です。

岡崎選手はリーグ戦では5試合ぶりの先発出場。アルジェリア出身のFWスリマニが加入したことで、昨季24得点の快足FWバーディーとスリマニが2トップを組む機会が増え、岡崎選手の出場チャンスは昨季に比べ格段に減ってしまいました。しかしこれまで2勝4敗2分とレスターの戦績はふるいませんでした。

英BBC放送の人気サッカー番組「マッチ・オブ・ザ・デイ」で岡崎選手の活躍が取り上げられました。日本の名古屋グランパスエイトでプレーしたこともあるW杯メキシコ大会得点王リネカーはこの番組の司会を務めています。「昨季優勝したものの低迷するレスターから今季なくなったものが2つある。チェルシーに移籍したMFカンテと、出場機会が減った岡崎だ」とリネカーは言います。

レスターが低迷している理由は他にもいくつかあります。

(1)UEFAチャンピオンズリーグに出場するようになり、試合数が増えた(代表選手としての国際試合、FAカップ、リーグカップを含めると非常に試合数が多く、選手はヘトヘト)

(2)得点源のバーディー、MFマフレズのプレースタイルが研究された

(3)GKシュマイケル、DFモーガン、フートの守備連携が今一つ

岡崎選手はこの日、前半2分、相手GKがミスキックしたボールを奪ってロブでゴールを狙いますが、外します。惜しいヘディングシュートもありました。後半18分、ゴール前でセカンドボール(こぼれ球)に反応してきれいに蹴り込みます。このゴールはレスターにとっても、岡崎選手にとっても非常に大きな意味があります。

英紙ガーディアンは「岡崎が輝いてレスターが復活した。クリスタルパレスに勝利」と絶賛しています。サッカー番組「マッチ・オブ・ザ・デイ」でも、岡崎選手がいかに守備に貢献しているか、中盤での味方選手へのボールのつなぎ、ゴール前への走り込みで攻撃に厚みを加えているかが強調されました。

「今季、過小評価されているが、岡崎は役に立つハードワーカーだ」「良いプレーヤーだ」と元プロ選手コメンテーターも、リネカーも岡崎を絶賛しました。英国中のサッカーファンが見る「マッチ・オブ・ザ・デイ」で日本人選手がほめられるのは極めて珍しいことです。何より試合のデータが岡崎の貢献度を如実に物語っています。

ランの距離数

岡崎選手11.66キロ

マッカーサー(クリスタルパレスMF)11.57キロ

ドリンクウォーター(レスターMF)10.92キロ

ダッシュの回数

岡崎選手73回

ムサ(レスターMF)64回

キャバイェ(クリスタルパレスMF)62回

この数字は驚異的です。岡崎選手の献身的なランはカンテの抜けた穴を見事に埋めています。昨季レスターが優勝を決めた後、岡崎選手に普段から疑問に思っていたことを直接、お尋ねする機会がありました。岡崎選手は実に気さくに答えてくれました。

――15/16年シーズンは惜しい場面がいくつもありましたね。あと50センチ、相手DFより前に出てシュートが打てないのは、シュートを打つまで走らなければならない距離が長いからですか。それとも相手DFの足が速いからですか

「心の隅でボールが来ないかもしれないと思っているからです。ボールが来ると100%確信して走っていれば、もっと前に出ることができたはずです」

――プレミアリーグの超一流選手にはこぼれ球がどこに来るか予知する能力があるように見えてしまいます

「長年プレーしていると、どこにボールがこぼれてくるか分かるようになります。プレミアの選手は能力が非常に高いので、能力でプレーできます。予知能力なら日本人選手も負けていません」

――バーディーが前にいる分、岡崎選手はどうしても相手ゴールから遠い位置でプレーしなければなりません。ポジショニングは監督が決めるのですか

「どこら辺の位置でプレーするかは、試合の中で決まっていきます。来季は補強され、ポジション争いは激しくなるので、チャンスを活かして1点でも多く取り、もっと前に出ていけるよう頑張りたいと思っています」

今季初ゴールはセカンドボールを予知するように前に出たことから生まれたものでした。出場機会は減ったものの、岡崎選手のプレーの精度は確実に昨季より上がっています。一歩前に出る走りも増えています。ラニエリ監督は「今季最高のパフォーマンスだ」と会心の笑みを浮かべました。

岡崎選手の素晴らしいところは、動き出しがものすごく早く、しかも速いことです。スピードがあって重心が低い分、フィジカルの強いプレミアリーグでも当たり負けしません。プレミアリーグのほか、UEFAチャンピオンズゲームでレスターの試合が立て込んでくると、岡崎選手の出場機会は必ず増えていきます。

岡崎選手のプレーは昨季よりグレードアップしています。フル出場してもランが衰えないこと、シュートの精度が上がっていることをラニエリ監督やチームメイトにはっきり示すことができました。岡崎選手はレスター「勝利の方程式」の重要なピースです。今季、1点でも多く、岡崎選手が得点できるよう応援しています。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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