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アメリカの敵と味方 日本は同盟国8位 気になるロシアは

木村正人在英国際ジャーナリスト
デモンストレーションを行うロシアの戦車(写真:ロイター/アフロ)

大手世論調査会社ユーガブUSが1月28日から2月1日にかけアメリカで暮らす大人7,150人に「アメリカの敵と味方」について質問した結果を発表しました。144カ国をリストアップし「同盟」「友好的」「敵対的」「敵」「分からない」の選択肢を示しました。

その結果、アメリカ人から「同盟国」と認識されているのはカナダとイギリスがトップタイで55%。3位がオーストラリアの45%。4位がイスラエルの44%。日本は33%で8位(アイルランドも)。韓国は32%で10位でした。

出所:YouGovデータをもとに筆者作成
出所:YouGovデータをもとに筆者作成

「敵国」として認識されているのは北朝鮮が57%で断トツのトップ。それに41%のイラン、32%のシリアが続きます。トランプ米大統領がしきりに関係修復を強調するロシアは22%で6位でした。

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トランプが最初の首脳会談のお相手に第二次大戦以来の「特別関係」があるイギリスのメイ首相を選んだのは、この世論調査からは当然だったと言えるでしょう。

日本には、海兵隊出身で「マッド・ドッグ(狂犬)」の異名を持つマティス米国防長官が来日し、安倍晋三首相と会談しました。沖縄県の尖閣諸島は「日米安保条約に基づく防衛義務の対象だ」と明言し、これまでのアメリカ政府の方針を堅持する姿勢を明確にしました。

トランプはオバマ前大統領が進めてきた環太平洋経済連携協定(TPP)から就任早々に離脱。オバマの「アジア回帰」政策を引き継ぐかどうか疑問視する声もあっただけに、マティス長官の「尖閣防衛」確認に安倍政権もホッとしているでしょう。しかしトランプが大統領としてオバマと同じように「尖閣防衛」を明言するかはまだ分かりません。

南シナ海の要塞化、対中貿易赤字に対する批判だけではなく、米中関係のスタートラインである「一つの中国」政策にも異を唱えるトランプは中国へのプレッシャーを最高レベルまで強めています。米中関係は日中関係にも大きな影響を及ぼすだけに目を離せません。

中国に対するアメリカ人の認識は敵11%(14位)、敵対的34%、友好的26%、同盟6%です。「理念より取引(ディール)」を優先するトランプは出だし中国にふっかけ、最終的には「グランド・バーゲン(外交・安全保障・経済の包括的合意)」のディールを目指しているのかもしれません。

アメリカ本土を直撃する核ミサイルを最短で2年以内に開発する恐れがある北朝鮮を止めようと思うと、中国の協力なしではできません。さらにアメリカと中国の2大国が貿易戦争に突入すれば世界経済への影響は計り知れません。日本は「米中合意」シナリオを念頭に外交・安全保障政策を組み立てておく必要があるでしょう。

トランプとロシアのプーチン大統領の親密ぶりに、欧州のバルト三国、ポーランドなどの旧共産圏諸国だけでなく、北欧諸国も戦々恐々です。ロシア軍が侵攻してくる恐れが完全には払拭できないからです。

リスクレベルは南シナ海や尖閣のある東シナ海よりバルト三国の方がはるかに高いだけに、トランプ政権が欧州の安全保障へのコミットメントを明確なかたちで一刻も早く出すことを祈らずにはいられません。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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