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マー君世代のメジャーリーガーはどのように育ってきたのか。米国学校運動部3

谷口輝世子スポーツライター
メジャーリーグ球場で開催された子ども向け野球教室

シーズン制と全体練習日数の制限

昨年から、カリフォルニア州の高校運動部をまとめる連盟が、加盟校全運動部の練習時間を制限する規則を導入した。

米国カリフォルニア州では、高校運動部をまとめる連盟(California Interscholastic Federation)が、加盟校全運動部の活動時間を「1日4時間まで。1週間に18時間まで」とする規則を定めた。この規則は2014-15年度から適用されている。

出典:活動はコミコミで週18時間まで。違反は「スパイ」が告発も 米国学校運動部2

他州でも各高校体育協会の競技規則として、練習開始日と試合数を定めている。規則違反に対しては一時的に活動停止処分などを課すところが多い。

米国の学校運動部はシーズン制であるため、全体練習開始日とシーズン終了日を決定しやすい。練習開始日とシーズン終了日を明らかにすることで、他の種目やスポーツ以外の活動にも参加しやすくなる。もちろん、学業が疎かにならないようにという配慮でもある。

例えば、高校野球部の日程は次のようなものだ。テキサス州の今年度野球部の練習開始日は1月30日。州の優勝決定戦は6月10日から13日まで。試合数は23。トーナメント参加1度の場合は試合数は20。トーナメント2度参加は試合数17。トーナメント3度参加の場合は試合数14と定めている。

ニュージャージー州の野球部は練習期間がテキサス州より短く、練習開始日が3月6日、開幕日は4月1日、最終戦は6月6日だ。

シーズン中は学校野球部で。オフシーズンは学校外で

しかし、プロ入りや強豪大学に進学して野球を続けることを目指す高校生選手にとっては、数カ月の練習と試合だけでは物足りないのも事実。

米国のエリート球児たちは、小学生のころから競技チームなどに所属しているのが一般的だ。メジャーリーグ、ロイヤルズのマイク・ムスタカス内野手は、ヤンキースの田中投手と同じ1988年生まれ。ドラフト一巡目指名を受け、高卒でプロ入りした。ムスタカスは小中学生時代を振り返って「子どものときは3チームで野球をしていた。そのうちのひとつは週末だけ活動するチームだった」と話す。1チームの練習と試合が週に2、3日しかないため掛け持ちをし、ほぼ年間通じてプレーしていたのだ。

同じく88年生まれのリック・ポーセロ投手(レッドソックス)はニュージャージー州出身で、高校時代には完全試合を達成。ドラフト一巡目指名されて、高卒でタイガースに入団している。ポーセロは筆者の取材に対して「学校の野球部のオフシーズンには、サマーチームでやっていた」と言う。

ポーセロが所属していたサマーチームはプロ入りや大学の強豪野球部を狙う選手が集まるエリートチーム。ポーセロが高校時代にプレーしたサマーチームは夏だけではなく10月まで試合をしている。ここでは、州の高校体育協会の練習規則は適用されない。ドラフト候補選手を紹介するウェブサイトでは、選手の学校名のほかにサマーチームも掲載している。

野球部だけでなく、バレーボールやサッカーなど他の種目でも学校運動部のシーズンオフ期間中に民間クラブチームが受け皿となっている。エリート選手でなくても、学校運動部で優位にたつために、学校運動部のオフシーズンには、民間チームでプレーする選手も多い。しかし、こういった学校外のチームは費用がかさむため、参加できるかどうかは保護者の経済状況にも影響される。

学校運動部の活動期間は州の高校体育協会が制限している。学校運動部のシーズンオフ期間に学校外でどこまで試合や練習させるかは、最終的には保護者の責任で、家計との相談でもある。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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