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メジャーリーグが、選手の試合中のSNS投稿を1日だけ解禁。

谷口輝世子スポーツライター
昨年6月、試合中にSNSを使ってしまったサンドバル(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

メジャーリーグは、SNSの一種である写真共有アプリケーション「スナップチャット」を、選手が試合中に使用することを1日だけ許可することを明らかにした。

3月11日(日本時間12日)のオープン戦では、選手たちが、練習や試合中のダグアウトの様子などを撮影して「スナップチャット」に送信することができる。

このニュースを読んで、昨年6月にレッドソックスのサンドバル内野手が、試合中にSNSを使用してしまったことを思い出した。筆者は偶然にもこの「事件」の試合を取材していた。

メジャーリーグは試合中に外部と通信することを禁止している。試合中に外部と通信することは、敵チームの情報を盗むスパイ行為や野球賭博につながる恐れもある。

しかし、サンドバルは試合中にロッカールームにあるトイレに行こうとして、いつものクセで電話を持ち、ついインスタグラムを使ってしまったという。サンドバルのインスタグラムを追いかけていた一般の人が、試合中の時間帯にもかからわず、サンドバルが知人の投稿に「いいね」ボタンを押していたことをインターネット上で指摘。それがレッドソックスの番記者の知るところとなった。

メジャーリーグはサンドバルに処分を科さなかったが、レッドソックスのファレル監督は罰を与えるという意味合いで翌日の試合にはサンドバルを起用しなかった。試合前にはサンドバルはチームメートに謝罪した。

この他にも、選手が、本来なら球団や首脳陣に最初に報告するべき内容をツイッターなどのSNSで投稿してしまったなど情報漏えいの問題もあった。また、マスコミに囲まれた監督やコーチの話はほぼライブでツイッターなどに流れるので、事前に選手に話しておくべき内容が先にマスコミに流れる恐れもある。デトロイトタイガースの前監督であるジム・リーランドは、囲み取材の最中に記者がツイッターで談話を流すことを嫌い、囲み中のツイッターをやめるように記者に求めていた。

試合中に外部と連絡を取るのはご法度だし、使い方次第では首脳陣と選手との間で誤解が生まれることもあるが、各プロスポーツはチームや選手と、ファンをつなぐためにSNSを有効的に使おうと様々な試みをしてきている。

2012年1月にはNFLが選手たちにポロボウルの試合中にツイートすることを1日だけ解禁した。このときは両軍のサイドラインにコンピューターを設置し、ツイートしたい選手が使用できるようにした。

メジャーリーグでも2011年のオールスター戦のホームランダービーなどで選手の試合中のSNS投稿を限定的解禁した実績があるが、今回の1日解禁はスマートフォーンの使用が初めて認められたそうだ。選手たちはベンチにもスマートフォーンを持ち込んで、打席に入る直前の様子や試合中のチームメートの様子を発信することになりそうだ。

レギュラーシーズンでの試合中のSNS利用禁止の規則はすぐに変更になることはないだろうが、メジャーリーグは、オープン戦でスナップチャットの影響力を計測しようとしているのだろう。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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