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海外メディアは、東京五輪の野球・ソフトボールの福島県開催をどう伝えか。

谷口輝世子スポーツライター
(写真:アフロスポーツ)

2020年東京五輪の追加種目、野球・ソフトボールの一部試合を福島県の県営あずま球場で開催することが決まった。17日に韓国の平昌で国際オリンピック委員会(IOC)の理事会が開かれ、承認されたという。

英語圏メディアも、野球・ソフトボールの少なくとも1試合を福島県で開催することを伝えている。

CNN電子版では、「大会組織委員会は、オリンピックの試合によって、地震、津波、原子力発電の大惨事があった福島を復興させることにつなげたいとしている」と伝えた。

CNNでは、福島第一原子力発電所の事故の跡を写し出した数点の画像を掲載。「県営あずま球場は福島第一原子力発電所から70キロメートル離れたところだ」と述べ、福島第一原子力発電所からの距離を示す地図も付け加えた。

記事では、今も仮設住宅に住んでいる人が多くいることや、除染作業や廃棄物の入った黒い容器が並べられていることについても報じている。

米国NBCニュース電子版では、国際オリンピック委員会バッハ会長の「震災で被害を受けた地域にオリンピックの精神をもたらす素晴らしい機会」という発言などを伝えた。記事の横には、震災1年後の2012年に、防護服に身を包み、原発事故の付近で働く人の姿が掲載されていた。

記事の後半では、放射能を避けるため、多くの人が避難したこと、今も避難をしている人がいることを書き込み、今年3月末には自主避難者に対する支援が打ち切ることについても報じた。一部の活動家たちが、地域の特定の場所は健康リスクがあると信じている、とも書き加えている。

ザ・ガーディアン紙では「原発事故からの復興を助けるため、福島が東京オリンピックの試合を開催」という見出し。トップには、福島県浪江町で祈りを捧げる女性の写真を掲載。

球場の位置する場所は、避難命令が出た地域ではなく、あずま運動公園が避難所となっていたことに触れている。また、「原子力発電所が、廃炉まで40年かかるとしているが、オリンピックの試合で人々が訪れることには影響を及ばさないとしている」と伝えた。

いずれの記事も震災による深い傷跡が、まだ癒えていないことを伝えながら、福島が、東京五輪の野球・ソフトボールの一部の試合会場となることを報じている。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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