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殿堂館長が明言「イチローは殿堂入りに相応しい名選手」

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
31日のカージナルス戦でサヨナラ勝ちして喜ぶイチロー(右)、7月31日三尾圭撮影

7月31日(日本時間8月1日)に米フロリダ州マイアミにあるマーリンズ・パークでのセントルイス・カージナルス戦に出場したマイアミ・マーリンズのイチローは7回裏に代打で登場。一飛に倒れて、メジャー通算3000本安打までは残り2本のまま本拠地での10連戦を終えて、次の遠征地であるシカゴに向かった。

7月22日から始まった本拠地10連戦。歴代30人目となるメジャー通算3000本安打まであと4本で本拠地に戻ってきたイチローだったが、「4人目の外野手」であるイチローは10試合で2度しか先発機会を与えられずに、この10試合では17打数2安打で本拠地のファンの前で記録を達成することはできなかった。

イチローの快挙を目撃しようと、普段は空席が目立つマーリンズ・パークには大勢のファンが詰めかけた。ニューヨーク州クーパーズタウンにある米国野球殿堂のジェフ・アイドルソン館長も25日からマイアミ入り。29日の試合前には、日米通算安打でピート・ローズのメジャー記録4257安打を超えた時に着用していたユニホームとラインナップ表が米国野球殿堂に寄贈され、アイドルソン館長が受け取った。

31日の試合終了直後にアイドルソン館長を突撃取材して、イチローが成し遂げようとする偉業に関して話を聞かせてもらった。

――あなたが野球殿堂で働いたこの22年間で10選手が3000本安打を達成していますが、その瞬間に立ち会ったことは何回ありますか?

館長:実は一度もありません。立ち会おうと試みたのは2回。今回と(1979年の)カール・ヤストレムスキーの2回です。ヤズ(ヤストレムスキー)のときには、私は15歳で父親と一緒に2試合続けて野球場(ボストンのフェンウェイ・パーク)へ行ったのですが、今回と同じように記録達成はなりませんでした。

――3000本安打の瞬間に立ち会うのは、野球殿堂の館長としての任務の1つではないのですか?

館長:違います。記録に近づいてから記録を達成するまでにどれだけの日数を要するかが分からないですからね。

――それでは、今回はなぜマイアミに来られたのですか?

館長:イチローは私にとって特別な存在の選手だからです。彼とはもう何年もの友人でもあり、殿堂にも何度も足を運んでくれて、多大なる貢献もしてくれています。今回は日曜日(7月24日)にクーパーズタウンで(マリナーズ時代にイチローのチームメートだったケン・グリフィー・ジュニアと、ドジャース時代に野茂英雄とバッテリーを組んだマイク・ピアッザの)殿堂入りセレモニーがあり、その翌日にマイアミにやって来ました。1週間あれば、記録を達成してくれるかなと期待したのですが、残念ながら明日からは野球殿堂での仕事に戻らないといけないのでクーパーズタウンに帰ります。記録達成の瞬間は見られませんでしたが、この1週間でイチローが記録に挑戦する姿を間近で見ることはできました。

――メジャーでは3000本安打は超一流の証であり、殿堂入りの「通行手形」とも呼ばれています。

館長:これまでの歴史を見れば、3000本安打すれば殿堂入りは約束されたようなものですし、イチローは3000本安打以外にも素晴らしい偉業をいくつも成し遂げてきました。彼の能力を見てみると、(打撃の技術、打撃のパワー、走塁技術、守備力、送球能力の全てを高いレベルで兼ね備えた)5ツール・プレーヤーですし、10年以上の長い期間に渡ってリーグを代表する名選手でもありました。彼が積み上げてきた記録も素晴らしいですが、彼が野球に取り組む姿勢は他の選手たちに大きな影響を与えてきました。彼が野球へ取り組む真摯な姿勢や常に全力で準備をする姿には感銘を受けています。彼が引退したら……それはかなり先のことになりそうですが(笑)……殿堂入りするでしょうね。

――イチローが殿堂入りを果たせば、日本人選手初、アジア人選手初となります。

館長:メジャーリーグが本当の意味で国際的になった証となります。これまでに何人かのラテン・アメリカ出身の選手が殿堂入りしていますが、今度はアジア、そしてヨーロッパの選手が殿堂入りする番です。外国生まれの選手が米国野球殿堂に入ると言うことは、世界の一流選手がメジャーリーグでのプレーを望み、メジャーのレベルをさらに高めてくれますし、アメリカ国外での新たなファン開拓にも貢献してくれます。

――29日の試合前には、イチローが日米通算安打でピート・ローズの記録を塗り替えた試合で着用したユニフォームとラインナップ表が殿堂に寄贈されました。館長は日米通算記録をどう考えていますか?

館長:メジャーリーグでの記録保持者はピート・ローズです。しかし、イチローは海を超えて、全く環境の異なる国……トレーニングのやり方も言葉も習慣も全く違う国……にやって来て、ここで様々な艱難を乗り越えて、最上級のプレーを何年も続けてきました。そして、今は代打と言う新たな役割を与えられ、それも非常にうまくこなしています。彼の適応能力の高さには本当に驚かされます。イチローの打撃技術や野球の能力はピート・ローズに匹敵しますし、ローズ以上の能力の持ち主なのかもしれません。4257安打は、どのリーグ、どの国、どの惑星でプレーしていても驚くべき数字です。ピート・ローズはメジャーの歴代最多安打記録保持者ですが、イチローの記録も特別なものです。

――もし、メジャーリーグがイチローの日米通算安打を「認める」のであれば、2001年にイチローがアメリカン・リーグの新人王に選ばたことは矛盾しませんか?

館長:イチローはメジャーリーグのルールに則り新人王に選ばれたので、何も矛盾していません。メジャーのルールでは、それまでにどこの国のリーグでプレーしていても、メジャー1年目は新人資格を有しているのですからね。イチローはメジャーにとっても、もちろん日本球界にとってもスペシャルな存在で、真の一流選手です。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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