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レオナルド・ディカプリオ、休業宣言の裏側にあるもの

清藤秀人映画ライター/コメンテーター
レオ@ウルフ・オブ・ウォールストリート

「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(1月31日公開)を区切りにしばらく俳優を休業すると明言したレオナルド・ディカプリオ。本人は疲労を理由に挙げているけれど、事実はどうなのだろう?そこで、レオが休業宣言に至った経緯を僕なりに推測してみたい。

この10年間の出演作は同じボリューム感!?

15歳で子役デビューしてから、ずっとスタジオで暮らしてきたと言っても過言ではないほど仕事に忙殺されて来たレオが、言葉通り疲労困憊である可能性は高い。彼をそれ程までに疲れさせた最初で最大の原因は「タイタニック」(97年)だ。弱冠23歳で映画史に残る大ヒット作に主演し、天才子役から成熟した大人の俳優へと脱皮することに成功したレオだが、逆にそれが足かせになったことは否めない。「タイタニック」はアカデミー賞史上最高の11部門制覇という快挙を達成するが、レオ自身は、主演男優賞の候補からも漏れるという屈辱を味わうことになる。以来、彼は著名な監督をパートナーに迎え入れ、製作費も話題性も社会的メッセージもA級の作品を積極的にチョイスして来た。以下が「タイタニック」後の出演作だ。「ギャング・オブ・ニューヨーク」「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(02年)、「アビエイター」(04年)、「ディパーテッド」「ブラッド・ダイヤモンド」(06年)、「ワールド・オブ・ライズ」(07年)、「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」(08年)、「シャッターアイランド」「インセプション」('10年)、「J・エドガー」('11年)、「ジャンゴ 繋がれざる者」('12年)、「華麗なるギャツビー」そして「ウルフ・オブ・ウォールストリート」('13年)。ふー、列記するだけでこめかみの血管が切れそうだ。全作、レオがフルスロットルの熱演をぶちかましたオスカー級の作品ばかりではないか!?

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その間、「タイタニック」以前に出演した、「バスケットボール・ダイアリーズ」や「太陽と月に背いて」(共に'95年)や「マイ・ルーム」('96年)のようなコアでスモールな問題作をスルーした結果、俳優としてのラインナップに肝心のメリハリがなくなってしまった。かつて「ギルバート・グレイプ」('93年)で共演した同じくキャラクターアクターのジョニー・テップが、ティム・バートンとのコラボ作や「パイレーツ」シリーズ('03年~)の間に、「ラム・ダイヤリー」('11年)等のアートシネマを挟んできたのと比較すると、その違いは明らかである。

前言撤回?39歳の挑戦は続く!

故に、疲れ切って休みたい気持ちは分かる。しかも、怒濤の10年間でレオが勝ち取ったメジャーな演技賞は「アビエイター」のゴールデングローブ賞のみ。他は、オスカー候補が2回、ゴールデングローブ賞に至っては合計6回。その6回目が「ウルフ・オブ・ウォールストリート」だ。さて、悲願のアカデミー賞はどうなるか?因みに、「ウルフ~」の評判はすこぶる良く、先日のニューヨーク・プレミアでレオは「もしかして明日にでも仕事を再開するかも知れない」と前言撤回とも取れる発言。だって、まだ39歳。疲労を回復させるまでに時間はそれ程かからないはずだ。

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

2014年1月31日(金)より全国公開

http://www.wolfofwallstreet.jp/

配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン

(c) 2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

映画ライター/コメンテーター

アパレル業界から映画ライターに転身。1987年、オードリー・ヘプバーンにインタビューする機会に恵まれる。著書に「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社・刊)ほか。また、監修として「オードリー・ヘプバーンという生き方」「オードリー・ヘプバーン永遠の言葉120」(共に宝島社・刊)。映画.com、文春オンライン、CINEMORE、MOVIE WALKER PRESS、劇場用パンフレット等にレビューを執筆、Safari オンラインにファッション・コラムを執筆。

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