「3Dプリンタで銃を」プロジェクト、検索エンジン開発に着手

小林 啓倫 | (株)日立コンサルティング経営コンサルタント

3Dプリンタで印刷可能な銃の設計図を作成しているグループが、検索エンジンを開発へ

社会や産業のあり方を変えるかもしれないと期待されている3Dプリンタ。まだその普及は限定的なものだが、既に大きな物議を醸しているプロジェクトが存在している。テキサス大学法学部の学生コーディー・ウィルソン氏が率いる団体「ディフェンス・ディストリビューティッド」が進める「3Dプリンタによる銃製造」である。

これについては既に多くのメディアで報じられているが、プロジェクト名は「ウィキ・ウェポン」といい、彼らの公式サイトで詳細が明らかにされている。それによれば、彼らは単に3Dプリンタで製造可能な銃を設計するだけでなく、家庭用の安いプリンタでも出力できるようにすること、設計した3Dデータをネット上で共有することなどを目標として掲げている。2 万ドルを超える資金調達にも成功しているが、報道によって注目を浴びたことで批判の声が殺到。彼らがレンタルしていた3Dプリンタが差し押さえられたり、3Dデータの共有サイトにアップロードしていた関連データが管理者によって削除されたりするなど、ウィルソンたちは逆風に直面している。しかしプロジェクトは継続しており、銃器関連の3Dデータをホスティングするサイト「DEFCAD」を自ら開設したり、AR-15という銃の部品(もちろん3Dプリンタで製造したもの)を開発したりといった活動を続けている状況だ。

そして今回、米オースティンで開催中の「サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)」(ツイッターがブレイクするきっかけを得たことでも知られる、アートとテクノロジーが融合した一大イベント)において、ウィルソン氏が検索エンジンの開発に取り組むことを発表したとForbes誌が伝えている

それによれば、この計画はDEFCADを発展させる形で行われるもので、銃器用の3Dデータファイルのホスティングと検索エンジンという2つの機能を持つサイトになるとのこと。検索対象が同サイト内に限定されたものであるかどうかは不明だが、対象物は銃に限定しないと述べており、外部サイトも検索可能になる可能性がある。また当然ながら、検索結果やホスティングするファイルに対しては一切の検閲を行わない予定であるそうだ。

また既に現在のDEFCADはディフェンス・ディストリビューティッドにとって大きな収益源となっており(同サイトのバナー広告だけで月間4000ドルの売上を達成しているとのこと)、新サービスも利益追求型で運営すると述べている。単に銃関連のデータが集められたサイトではなく、「検閲や監視を気にせずに3Dデータがやり取りできる・検索できる」サイトになるとすれば、より多くの注目を集められるようになる可能性もあるだろう。

少なくとも彼らの目標が「銃をつくって満足する」ではなく「誰でも銃の設計図を入手できるようにする」というところにあるのだとすれば、専用の検索エンジンやホスティングサイトをつくるというのは理にかなった行為だ。そして新しいDEFCADが「危険物の3Dデータを見つけることのできるサービス」という評価を得るようなことがあったら、世界中で同じような武器開発プロジェクトを進めようとしている人々がつながる可能性があるという点で、実はウィキ・ウェポン以上に物議を醸す存在になるかもしれない。3Dプリンタという端末をどう扱うかという問題だけでなく、自由に流通し、共有される3Dデータにどう対処するかという問題に目を向けるきっかけにもなってゆくのではないだろうか。

小林 啓倫

(株)日立コンサルティング経営コンサルタント

(株)日立コンサルティングの経営コンサルタント。1973年東京都生まれ。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、2003年に米マサチューセッツ州バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム等を経て、2005年から現職。著者に『災害とソーシャルメディア』(マイコミ新書)など。ブログ「POLAR BEAR BLOG」は2011年度のアルファブロガー・アワードを受賞している。

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