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仏「シャルリエブド」誌がアイランちゃんの写真を題材にした風刺画を掲載

小林恭子ジャーナリスト
シャルリエブド誌はアイランちゃんの写真を取り上げた(ツイッターより)

フランスの風刺雑誌「シャルリエブド」の最新号が、トルコの海岸で見つかった、シリアからの難民男児アイラン・クルディちゃん(3歳)の遺体画像を風刺画のトピックとして描いている。ツイッターを見ると、「気持ち悪い」「恥を知るべきだ」などの声が出ている。(*Aylan=アイラン=ちゃんは Alan=アラン=と表記されることもあるようです。)

今月2日、波打ち際に顔をふせて横たわっていたアイランちゃん。その姿を撮影した画像は、世界中の注目の的となった。赤いTシャツに半ズボンのアイランちゃんは、両親と兄と一緒にゴムボートに乗り、ギリシャに向けて出発したが、ボートが転覆し、命を落とした。母と兄も亡くなった。

画像では顔の正面は見えなかったが、アイランちゃんは小さな体を通して、欧州に渡ろうとする難民たちの姿を生々しく伝えた。子供がある人もない人も、心を動かさずにはいられない光景だった。

このアイランちゃんの画像をもとに、シャルリエブドは2つの風刺画を掲載した。

その一つは「移民さん、ようこそ」という題名がつき、横たわる子供のイラストの左上に、「ゴールにとても近かったのに・・・」という文字が書かれている。その右隣にはマクドナルドの看板が描かれている。看板には、「子供たち二人のメニューを、一人分で」(買える)というプロモーションがある、と書かれている。

もう1つの風刺画は、題名が「欧州がキリスト教信者である証拠」。左側にキリストと見られる人物が立っている。その右横には、半ズボンをはいた、子供らしい人物が海の中に頭を突っ込んでおり、半ズボンと足だけが見える。キャプションが付いていて、「キリスト教徒は水の上を歩く。・・・イスラム教徒の子供たちは沈む」。

果たして、これが風刺なのだろうかー?筆者はこの二つの風刺画をネットで見ただけで、実際の雑誌を手に取っていないので、ほかに関連の表記があるのかどうかは分からない。

しかし、もし風刺の目的が「権力者を批判する・笑う」のであれば、これは風刺には当たらないだろう。弱者を笑っているように見えるからだ。イスラム教徒を差別的に描いているようにも見える。

いったい何が面白いのかなと個人的には思うが、何か深い意味があるの「かも」しれない。あるいは、ないのかもしれない。状況が分かる方に教えていただきたいものだ。もっとも、「笑い」は説明されてしまっては、つまらなくなるものだが。

一つの解釈として、亡くなった子供やイスラム教徒を笑っているのではなく、「難民問題をうまく処理できない、右往左往状態の欧州政府を笑っている」と言えなくもないがー。

ご関心のある方は、ハフィントンポスト英語版のサイトからご覧になっていただきたい。

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊は中公新書ラクレ「英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱」。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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