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錦織圭を悲願のグランドスラム初制覇へ導くマイケル・チャン。彼の現役時代を振り返る独占インタビュー3

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
錦織への指導に熱が入るチャン(写真左)(photo by 神 仁司)
錦織への指導に熱が入るチャン(写真左)(photo by 神 仁司)

2月22日に44歳になったばかりのマイケル・チャン(アメリカ)は、現在、日本男子テニスのエースである錦織圭のツアーコーチを務めている。

チャンコーチの人柄を少しでも知ってもらうために、2002年に私が行ったワンオンワンインタビューを紹介していきたいと思う。

第3回では、敬虔なクリスチャンでもあるチャンのテニス哲学がわかる。チャンが、自分自身の家族を持ちたいという思いは、結婚して妻と暮らし、3人の子供達の父親になったことで、すでに実現している。テニス大会の会場でも、チャンが、妻子と一緒にいることを目にすることが多く、彼の家族思いがうかがえる。

――(当時2002年)あなたがテニスをプレーするモチベーションは何ですか。

チャン:第一に、神様が“まだプレーを続けなさい”と言っているんです。だから私はそうしています。第ニに、スポーツとしてのテニスを楽しむことです。試合で競うことも、厳しい練習をすることも楽しむようにしています。また、テニス会場で観客が作り上げる雰囲気を楽しむようにしています。ずっと長い間楽しむことができています。いい成績のときに、自分のキャリアを終えるというのも一つの形だと思いますが、自分の年齢と相談しながら決めていくものだと思います。テニスはいつも楽しいものでした。だから、テニスへの情熱を失って、自分自身が楽しむことができなくなったら、それが引退するということなのでしょう。

――現役引退後に、思い描いている人生プランはありますか。

チャン:そうですね。家族で行っている「チャン・ファミリーファンデーション」にもっとかかわっていきたいですね。ファンデーションでは、現在いろいろなプログラムを手がけています。ホームタウンのシアトルでバスケットボールリーグを運営しているのもその一つです。母は、いろいろなプログラムを将来立ち上げたいと思っているようです。いろいろな援助ができたらと考えています。もちろんテニスにもかかわっていきたいです。若いテニスプレーヤーがレベルアップできるよう助言できたらいいね。とにかく、家族の一員として役に立てたらうれしいな。そして、私自身の家族を持てたらいいですね。

――最後に、あなたにとって、テニスとは何ですか。

チャン:そうですね、いろんな意味を踏まえると、私は、テニスを仕事としてとらえていなかったと思います。私は、長い間仕事ととらえずに、テニスを楽しんできました。こう考えることは、私が生きていくうえで、とても大切なことでした。テニスが、私の人生、私の情熱と言ったことはありませんが、長い人生を楽しむにあたって、自分になくてはならない体の一部のようなものだと言えます。

テニスと関わっていきたいというチャンの思いは、錦織のコーチになったことで実現されている。まさか日本人男子選手のコーチを引き受けることになるなんて、30歳のチャンは想像さえできなかっただろう。

アジアの流れをくむ中国系アメリカ人であるチャンが、1990年代に示してくれた、アジア系選手でもワールドテニスツアーで、一流選手として活躍できるという系譜は、現在、錦織がしっかり受け継いでいる。そして、チャンの熱い思いも、錦織が受け継いでくれることを願いたい。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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