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ウインブルドンテニス2回戦に臨む錦織圭は、体とよく相談しながら慎重にプレーを選択すべきだ

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
ウインブルドン1回戦を突破した錦織だが、左わき腹の痛みは完治していない
ウインブルドン1回戦を突破した錦織だが、左わき腹の痛みは完治していない

テニスの4大メジャーであるグランドスラムの第3戦・ウインブルドン1回戦で、第5シードの錦織圭(ATPランキング6位、6月27日付、以下同)は、サム・グロス(123位・オーストラリア)を、6-4、6-3、7-5で破って、2回戦に進出した。

1回戦でグロスは、最高時速228kmのサーブを打ったり、15本のサービスエースを決めたりしたが、プレーが単調なうえイージーミスが多かった。グロスは、29本のミスを犯して、100%のコンディションではない錦織をだいぶ助ける形になった。

一方、「まだ少し痛みがあった」という錦織は、前哨戦で痛めた左わき腹の痛みは完治しておらず、第2セット終了後、メディカルタイムをとって、トレーナーからマッサージを受けた。

錦織のプレーに一番悪影響を及ぼしたのがサービスで、おそらく70%ぐらいの力で打っていたと思われるが、錦織にそのことを聞くと、「今日は、そこまでいいサーブがいらなかったので、まぁ、あれぐらいでよかったかなと思います」と語り、リターンミスの多かったグロスには、サーブのスピードに頼らず、プレースメントだけで乗り切れたことにホッとしているようでもあった。

2回戦で錦織は、ジュリアン・ベネトー(547位、フランス)と対戦する。ベネトーとの対戦成績は、錦織の3勝1敗。ベネトーは、昨年にそけい部の手術をして、プレーができなかったためランキングを落としている。34歳で百戦錬磨のベネトーが、どのぐらいプレーが戻っているかにもよるが、実力者であるだけに、錦織は油断できない。

「ストロークがしっかりしていて、バックが安定しているイメージがある。1回戦よりストローク戦になるだろうし、リターンからもっと攻めていければいい」

1回戦で錦織は、サーブをフルパワーで打たずに済んだが、2回戦ではそれを許されない場面も当然出てくるだろう。

しかし、今の錦織に無理は禁物だ。左わき腹は、錦織がジュニア時代から10年以上にわたって、時折痛めてきた古傷だからだ。

さらに夏には、北米のハードコートシーズンが控えており、8月にはリオデジャネイロオリンピックもあるため、超過密スケジュールとなる。もし、錦織が万全なコンディションでなければ、乗り切ることは難しくなるだろう。そして、8月下旬のメジャー最終戦であるUSオープンテニスにも支障をきたしてしまうかもしれない。

ウインブルドンで、錦織のいいプレーはたしかに見たい。だが、それは、錦織が万全なら、だ。2016年シーズン後半戦を見据え、ウインブルドン2回戦は慎重にプレーの選択をしてもらいたい。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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