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錦織圭、ATPワールドツアーファイナルズ(男子テニス最終戦)でのベスト4は誇るべき成績だ

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
ツアーファイナルズ準決勝で、ノバク・ジョコビッチに敗れた錦織圭(写真/神 仁司)
ツアーファイナルズ準決勝で、ノバク・ジョコビッチに敗れた錦織圭(写真/神 仁司)

男子テニスツアーの最終戦・ATPワールドツアーファイナルズで、2年ぶりに2度目のベスト4へ進出した錦織圭。

ラウンドロビン(総当たり戦、以下RR)では、第5シードの錦織圭(ATPランキング5位、11月14日付け、以下同)は、1勝2敗の成績で終えた。

錦織が属するグループは、3選手が1勝2敗で並ぶ混戦となったが、錦織は、第3シードのスタン・バブリンカ(3位、スイス)に直接対決で勝っているうえに、セット勝率でも上回ることができたため、RRを突破することができた。

そして準決勝で、錦織は、第2シードのノバク・ジョコビッチ(2位、セルビア)と対戦したが、1-6、1-6、わずか1時間6分で敗れて、ツアーファイナルズでの初の決勝進出はならなかった。

「何一つできることなく終わってしまった。(自分が)とてつもなく悪かった」と錦織が振り返り、ジョコビッチは「圭は明らかにベストではなかった。たぶん少し疲れていた」と対戦相手を気づかった。

各セット1ゲームずつ取れた錦織だったが、正直ジョコビッチに取らせてもらったというゲームだった。単刀直入に言えば、年間ナンバーワン争いをしていて、調子を上げてきているジョコビッチに対して、今回錦織は勝負にならなかった。

「体の反応もいま一つ悪かった。フィジカル面で、ノバクと戦う準備ができていなかった」と語った錦織は、体幹が使えず、腕だけでラケットを振る、いわゆる手打ちになっていた。

準決勝後の会見で、錦織は「大丈夫です」と語ったものの、フィジカルに何らかのトラブルがあったと見るべきだろう。

実は、RR2戦目のマリー戦とRR3戦目のチリッチ戦で、錦織は左わき腹にテーピングをしてプレーをしていた。そして、チリッチ戦の第2セット中盤から、錦織のテニスのクオリティがガクッと落ちた。左わき腹に何らかのトラブルが発生していたからだと考えるのが妥当だ。

“フルパワー錦織”で戦って3時間20分におよんだマリー戦が、錦織の体に負担が大きかったのだろう。RR2試合目とRR3試合目は1日空いたものの、錦織の体力が回復しきれなくても何ら不思議ではなかった。来季も引き続きフィジカル面は、錦織の課題となる。

ツアーファイナルズベスト4という成績は誇るべき立派な成績だ。だが、錦織は、いい状態で戦えず、自分のベストテニスを、2016年シーズン最終試合で披露できなかったことに肩を落とした。

「やっぱり……、あまり嬉しくないというか、喜ばしい終わり方ではないので、やっぱり後味は悪いですけど……。1試合目のワウリンカ(に勝ち)、(2試合目の)マリーにもあと一歩でしたし、ポジティブなところもあるので、また来年もっと上に行けるようにしたいですね」

そして、2016年シーズンを終えた錦織は、次のように振り返った。

「結果的に見れば、いちばんいい年だった。5位で終われたのも価値のあることだと思う。チャンスがあれば4位や3位に入っていける圏内にいる。プラス、トップ10の選手にたくさんいい試合があったり、勝ったりした。(ラファエル・)ナダルやマリー、勝てなかった選手に勝ててきているので、確実にステップはつめていると思います」

2017年シーズンでは、錦織は27歳になり、プロ転向10周年を迎える。節目となるシーズンに、テニス4大メジャーであるグランドスラムや、その一つ下のグレードのマスターズ1000大会で、そしてツアーファイナルズで、錦織が大きな仕事をやってのけることを期待したい。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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