マスコミ大騒ぎの「北朝鮮マツタケ」事件が終了。そしてシラけた空気が残った…
北朝鮮を支持する民族団体、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が25日、結成60周年を迎えた。これを受け、本国の労働新聞も同日付の1面に、朝鮮総連を持ち上げる社説をデカデカと掲載している。
まさかそれに遠慮したわけでもあるまいが、北朝鮮産マツタケの不正輸入事件の捜査が、これまでのマスコミの大きな扱いとは裏腹にひっそりと終了したようだ。
この事件では、朝鮮総連トップの次男が逮捕されるとともに、新聞が金正日総書記の関与を匂わせる報道を行い、「何かが動くかもしれない」という期待を世間に持たせた。
しかし実際のところ、この事件そのものに大した中身はない。
各紙の報道によれば、府警は朝鮮総連の関係先を捜索した際に、「金正日将軍様の意向」「朝鮮労働党」などと書かれた文書を押収した。その大半がハングル表記であり、「数か月かけて翻訳・解析した結果を見て、捜査員らは息をのんだ」(読売新聞)という。
大手メディアはいい加減、こんな大げさな書き方で警察に“お追従”をするのは止めるべきだ。朝鮮総連の関係先には、例外なくこうした文書が存在しており、むしろ無い方がおかしいくらいだ。
肝心なのは、それらの文書の中に金正日総書記の直接の指示が含まれていたかどうかなのに、新聞はまったくそこに触れていない。
また、捜査が一貫して京都府警の主導で行われたのも気になる。公安関係者によれば、「今回の捜査に警視庁はいっさい関わっていない。むしろ捜査現場への接近を厳禁されたほどだ」という。
ならばなぜ、警察首脳は京都府警にこの捜査を担当させたのか。それは京都府警が昨年、極左セクトを相手に「前代未聞の大失態」を演じており、その名誉挽回を期してのことだという。
筆者は何も、今回の捜査が不当であると言いたいわけではない。法令違反を摘発するのは当たり前だし、北朝鮮の工作活動に対する警戒も必要だ。
しかし、大した成果が上がりそうもない事件捜査をマスコミが大げさに持ち上げるのは、日本政府が北朝鮮に対して「何かやっているフリ」をするのを助け、日本人拉致問題で「無策」に陥りつつある現状を隠してしまうことにつながる。
もしかしたら、日本政府や警察はすでに、こうした「演出」の中毒にかかっているのではないか。
かつての外事警察は、北朝鮮による工作活動の中でも、兵器開発に直結するような精密工作機械などの輸出事件を重点的に捜査していた。しかし近年になって摘発された不正輸出事件の記録を見ると、中古タイヤやニット生地、冷凍タラ、壁紙、ファンデーションなどの品目が並ぶ一方、精密機器に関する記述は見られない。
その背景には、功を焦る警察幹部が「成果」を急がせるあまり、捜査の現場が短期間で仕上げられる「お手軽」なネタに走りがちになっている実情があるとされる。
実際、北朝鮮はごく最近にも、最新生産管理システムの開発を自慢し、それを核開発施設に導入することを示唆している。そこに使われているコンピュータソフトの出所について、外事警察が関心を持っているという話をいっこうに聞かない。
今回の「マツタケ狩り」で、京都府警は警察庁長官から表彰を受けるとの噂を聞いた。その様子を見ながら、裏で北朝鮮が高笑いしていないことを願うばかりだ。