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女子大生売春に悩む金正恩氏

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
携帯電話で通話する北朝鮮の女性(参考写真)

北朝鮮で、「女子大生売春」「ヤミ金融」「不動産ころがし」などの裏ビジネスが、いっそう盛んになっている。

10月10日で創建70周年を迎える朝鮮労働党は社会主義を標榜する政党であり、金日成・正日・正恩の親子3代にわたる独裁者は、折に触れて自分たちの「社会主義の偉業」を自画自賛してきた。

しかし、国家の計画経済が停滞する中で社会主義システムは崩れ去り、巷では資本主義社会とまったく同じような「ビジネス」が隆盛を極めているのだ。

たとえば、ヤミ金。北朝鮮では民間の金融業は違法行為であるため、国家の支援を受けられない中小規模の事業はほとんど例外なく、ヤミ金に資金調達を頼っているようだ。気になる金利は、年利で10%と意外に良心的だ。国の経済成長率が低いためかも知れない。

また不動産の売買も厳密には違法なのだが、住宅ブローカーの商売は今や「半公認」になった観もある。住宅の売買が一般化するとともに、かつて超高額だったブローカーの手数料が妥当な価格に落ち着いたようだ。市場の中でブローカー同士の競争が生まれ、手数料の値下げやサービス向上を求める圧力が働いた可能性がある。

これらのビジネスは違法ではあっても、経済をどうにか回さなければならない国家にとって必要不可欠になってきている。一方、治安当局などが頭を痛めているのが、売買春の横行である。

これは今に始まったことではなく、5年前には女子大生らによる売春行為に関する治安当局の内部資料が流出。「通勤時間にバス停や駅で集団的に売淫行為を行っている」という驚くべき実態が明らかになった。

近年では、売春も産業化が進んでいる模様で、客が払う料金も、相手をする女性の年齢によって差がつけられるようになった。

また、北朝鮮の東海岸、中朝国境に程近い羅先(ラソン)経済特区などへの中国人観光客が増えるに従い、彼らを相手にした売春ビジネスが横行。客との値段交渉はレストランや道端で行われ、話がまとまればホテルや車の中、或いは路上で性行為を行う露骨さに、金正恩氏が激怒。「外国人相手の売春行為は銃殺」との指示を下したとも言われる。

ちなみに北朝鮮で売春が増えている背景には、金正恩時代に入って経済難が深刻化し、女性が家族のために稼がざるを得ない事情がある。そうした女性らが行う売春は「生計型売春」とも呼ばれ、デイリーNKはかつて、その現場映像を入手している。

金正恩氏は「銃殺」という極端な手段で売春を取締るより、彼女らを自由にするためにも、国の改革開放を考えた方が良いだろう。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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