北朝鮮、新年1発目で「対日批判」の真意は?
北朝鮮外務省は1日、新年最初のコメントで、日本と韓国の両政府による「慰安婦問題妥結」を批判した。
同省報道官がこの日、「日本国家が20万人の朝鮮の女性をはじめ世界の諸国の女性らを相手に働いた性奴隷犯罪は国際的な特大型の反人倫犯罪で、その被害者は朝鮮半島の南だけなく北にもおり、他のアジア諸国と欧州にもいる」と発言。「徹底した謝罪と賠償」を求めたのだ。
(参考記事:「慰安婦被害者は北にもいる」北朝鮮外務省、日韓妥結を批判)
北朝鮮がこうした主張を持ち出し、元慰安婦の人々の人権を「外交カード」にしようとするのは、十分に予想できたことだ。ただ、日本側が対応を誤れば、北朝鮮との外交戦で微妙な立場に追い込まれかねない。
日本政府はEUとともに、北朝鮮の人権侵害の責任追及を求める国連決議を推進してきた経緯がある。その決議のベースになっている「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」の最終報告書(以下、国連報告書)は、政治犯収容所の問題をはじめ数々の人権侵害について、日本人拉致問題とともに糾弾している。
(参考文献:北朝鮮における人権に関する国連調査委員会の報告)
(参考文献:国連報告書「政治犯収容所などでの拷問・強姦・公開処刑」)
北朝鮮は今後、自国を拉致問題と人権問題で圧迫する日本に対し、別の人権問題で切り返してくる可能性が高い。
だが、気になる点がひとつある。北朝鮮側がこのところ、「ストックホルム合意」に言及しなくなっていることだ。
同合意では、日本側が北朝鮮との「不幸な過去の清算」を約し、北朝鮮側が拉致被害者らの包括的調査に応じている。
(参考資料:ストックホルム合意)
そのため北朝鮮は日本に対し、「拉致のことを言うなら、過去清算はどうなってるんだ」という主張をぶつけてきていたのだが、ここ数カ月はそうした表現が見当たらないのだ。
もしかしたら北朝鮮は、まるで進展しない対日関係にすっかり興味を失ってしまったのか。そうならばなぜ、新年最初のコメントで日本に言及したのか。真意をつかむには、もうしばらく観察が必要だ。