北朝鮮外相「逆ギレ演説」に見る金正恩氏の動揺ぶり
北朝鮮の李スヨン外相が1日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれている国連人権理事会で演説し、今後、北朝鮮の人権侵害を追及する会議には出席しないとの意向を示唆した。
文字通りの「逆ギレ」演説である。
人権理事会では3月24日までの会期中、日本人拉致問題を含む北朝鮮による人権侵害への対応策が話し合われる。北朝鮮の人権問題を担当する国連のダルスマン特別報告者は最新の報告書で、金正恩第1書記に対して「人道に対する罪」で調査する可能性があることを公式に通知するよう国連人権理事会に求めている。
「人道に対する罪」を問われるというのは、ざっくり言えばヒトラーなどと同列に扱われるということであり、北朝鮮の外相とすれば、そんな所に場を占めることすら「とんでもない」ということかもしれない。
(参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「人道に対する罪」の実態)
しかし、いくつかの会議をボイコットしたからといって、金正恩体制への追及が弱まるわけではない。
こうした国連の動きは、2014年3月17日に国連人権理事会に提出された「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」の最終報告書に基づいている。その内容は多岐にわたっており、北朝鮮側にとってはいちいち否定することすら負担だろう。
(参考記事:「まるで公開処刑が遠足のようだった」…北朝鮮「人権侵害」の実態)
(参考記事:拉致され「妻」として与えられた女性たち…北朝鮮「人権侵害」の実態)
それでも、自国の体制に深刻な影響を及ぼす可能性のある会議から「逃げる」というのは、明らかに動揺の表れと言えるだろう。
実は、北朝鮮の公式メディアが、こうした人権追及の動きに非難の声を発する回数自体は減っている。核実験時の声明など重要なタイミングでは「謀略的な人権騒動」などの表現で怒りを表すのだが、1年ほど前までのように日々、非難の論評を垂れ流してはいない。
つまりは「だんまり」を決め込む姿勢がうかがえるわけだが、それはすなわち「打つ手」を失っているということでもある。
金正恩氏が核とミサイルの暴走を続ける背景には、間違いなく人権問題がある。それでいてこの問題から目を背けようとするのは、正恩氏がかなりの「緊張」を強いられているからではないのだろうか。
(参考記事:北朝鮮「先制攻撃」声明に見る金正恩氏の「メンタル」問題)
(参考記事:金正恩氏が「暴走」をやめられない本当の理由)