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金正恩体制で最強人気は韓国より「日本ブランド」だった

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏

北朝鮮で「家電ブーム」が起きているという。きっかけは5月に開催された朝鮮労働党第7回大会だった。先月の党第大会直前、デイリーNKは参加者に記念品として配る予定の「お菓子セット」を独占入手し、本欄でも詳細を報じた。

(参考記事:金正恩氏の「プレミアムお菓子セット」を独占入手!…党大会のお土産用

しかし、なぜ労働党大会をきっかけに「家電ブーム」が起きているのか。

ZARAやナイキも大人気

かつて、金日成時代に開催された党大会(最後の大会は1980年)では、参加者にカラーテレビが配られていた。その時の記憶のせいか、日本製、例えば「ナショナル(現パナソニック)」や「日立」のテレビが「長持ちして質がいい」というブランドイメージを抱く北朝鮮の年配者は多い。

こうした過去の経緯、そして、今回の大会が36年ぶりということもあってか、一部からは「党大会で、みんなに45インチの高級液晶テレビ、冷蔵庫、パソコンが配られる」という噂が流れていた。

しかし、いくら北朝鮮の経済が上向きになっているとはいえ、さすがに液晶テレビが配られることはないだろうと筆者も思っていたのだが、実際に、中国製の液晶テレビがプレゼントされた。金正恩党委員長の大判振る舞いに驚きだ。

(参考記事:北朝鮮、党大会参加者に「液晶テレビ」をプレゼント

そして、これが幹部とドンジュ(金主)と呼ばれる新興富裕層の購買欲に火を付けるのだが、彼らが欲しがるのは、なんと「メイド・イン・ジャパン」の液晶テレビ。デイリーNKの内部情報筋は次のように打ち明けた。

「最新型テレビが富の象徴の一つになりつつある。なかでも、中国を通じて輸入される日本のソニーが最も人気だ。その次が、韓国LG、そしてサムソンだ」

情報筋によると、今ではテレビだけでなく、エアコン、空気浄化機、除湿機などの家電製品の人気も高まり、平壌ー北京を繋ぐ国際列車の荷物車両は食品より、家電製品でぎっしり詰まっているという。

北朝鮮で「ソニー」が一番人気で、韓国製が二番手、そして中国製がその後に続くというのも意外な話ではない。

高級幹部やドンジュの家庭の子どもたちは、整形を厭わずZARAなどのファストファッションを好む。さらに、マダムたちは美容のための牛乳風呂、はては覚せい剤ダイエットにまで手を出すというほどの驚くべき贅沢ぶりだ。付け加えると、最高指導者の金正恩党委員長、そして故金正日総書記が、敵国である米国ブランド「アップルコンピュータ」のファンだった。

(参考記事:整形顔の「北朝鮮セレブ」はZARAとナイキがお気に入り

(参考記事:金正恩氏が「iMacユーザー」であることが確認…親子二代のアップルファン?

そのうち、金正恩氏がコカ・コーラ、いやスターバックスのラテを片手に「アメリカ帝国主義に無慈悲な鉄槌を!」と叫ぶ日が来るのかもしれない。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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