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女子大生には拷問、女子高生は公開裁判…北朝鮮の人権侵害(3)

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(写真:ロイター/アフロ)

北朝鮮の人権に関して国連調査委員会が公表した報告書は、同国の指導層、すなわち金正恩体制が決定した政策によって、広範囲にわたる「人道に対する罪」が今現在も行われているとしている。

このなかでも、とりわけ女性に対する人権侵害のレベルは深刻だ。

指導層の慰み者「喜び組」

金正恩党委員長の父親である金正日氏は、「5課処女」という「権力層に仕える女性」を選抜、管理するシステムをつくりあげた。代表的な5課処女といえば、日本でもよく知られている「喜び組」。まさに、指導層が権力を笠に着て、女性を仕えさせ、時には慰み者にする。そんな前近代的な女性差別が、今現在も行われているのだ。

(参考記事:「喜び組」スカウト部門が「バツイチ美女」をかき集める理由

この問題が複雑なのは、北朝鮮社会が、儒教的で男性本位な特徴があることから、女性に対する性暴力はそれほど問題視されず、被害を受けた当事者の女性も告発できないことだ。軍隊内や職場内で性的暴行の事実が明らかになった場合は、むしろ被害者である女性が侮辱されたり不利益を受けたりするので、女性は沈黙するしかないーーつまりは2重の被害である。

女性収監者は裸で調査

こうした女性差別は、もはや「女性虐待」と言っても過言ではなく、成人女性のみならず、若い女子に対しても同様のことが行われている。

今年1月には、「米国映画を見た」という罪状で、高校生の男女15人が公開裁判かけられた。現地の情報筋によると、公開裁判にかけられたのは16歳と17歳の少年・少女たちだったという。

そして、悪名高き「政治犯収容所」などの拘禁施設内では、せい惨な人権侵害が常態化している。韓流ドラマを視聴したことが北朝鮮の秘密警察「国家安全保衛部」に発覚し、連行された23才の女子大生は、激しい拷問と、彼女を待つ10年間の地獄のような拘禁生活に絶望し驚くべき行動に出た。

(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

韓国ソウルにある「北朝鮮人権情報センター」傘下の「北朝鮮人権記録保存所」によると、北朝鮮の拘禁施設の総計は約480ヶ所。内訳は、「拘留場」と「労働鍛練隊」が210ヶ所、「教化所」が23ヶ所、「教養所」が5ヶ所、「集結所」が27ヶ所、「政治犯収容所」が6ヶ所だ。

こうした拘禁施設で常態化している女性虐待をそのままにしておくことは、ナチス・ドイツがアウシュビッツ強制収容所で行ったユダヤ人の大虐殺(ホロコースト)を看過することに匹敵するだろう。北朝鮮の人権侵害に対する国際社会の圧力は、いくらかけてもかけ過ぎることはない。

(参考記事:北朝鮮、拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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