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金正恩氏の「魔手」におびえる北朝鮮の美人ウェイトレスたち

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
集団脱北した北朝鮮レストランの女性従業員ら

中国浙江省寧波市の北朝鮮レストラン「柳京食堂」から今年4月に集団脱北した男性支配人と女性従業員ら13人が、4ヶ月に渡る調査を終えて、保護施設を退所したと韓国メディアが伝えている。

KBSは韓国政府当局者の話として、13人は何組かに分かれ、時期をずらして退所した。本人たちの意思に従い、別々に暮らすことになるが、居住地は明らかにされていない。

人気爆発の美女

資本主義を知らずに育った北朝鮮の人々が、韓国社会で安定した生活を手にするのは簡単なことではない。ただ、今回の13人は中国でいくらかは経験を積んでいるし、北朝鮮レストランの女性従業員に対する好感度は高い。

彼女たちは、現代韓国の女性には見られない古風でしとやかな立ち居振る舞いで、男女問わず、中年の韓国人を魅了していた。近年では、特に容姿端麗なウェイトレスの写真がネットで出回り、韓国の若者たちの間でアイドル並みの人気を博している例もある。

(参考記事:美貌の北朝鮮ウェイトレス、ネットで人気爆発

新たな出発をすることになった13人が、幸せを手にすることを願わずにいられないが、それには資本主義の競争社会とは別に、もうひとつ大きな障害が立ちはだかる可能性がある。

「喜び組」の秘密暴露

北朝鮮当局は女性従業員らの集団脱北について、韓国の情報機関による「誘引・拉致」であるとの執拗に繰り返してきた。親北派のメディアを使い、彼女らを「指名手配」するかのような挙に出たり、公開処刑を指示したりもしている。

これは、彼女たちには現実的な脅威だ。彼女が韓国社会で生活していくならば、「誘引・拉致」説が事実でないことが証明されてしまう。逆に、彼女らを連れ戻せば、北朝鮮は自分たちの主張こそ正しいのだと強弁することができる。

北朝鮮は必要とあらば、韓国においても暴力の行使をためらわない国だ。過去には、ソウルで亡命生活を送っていた金正日総書記の妻の甥である李韓永氏が、北朝鮮工作員の手で暗殺されている。

李氏が「喜び組」や「秘密パーティー」、そして正日氏の女性遍歴など、北朝鮮の権力の恥部を暴露したことに正日氏が激怒したためと言われている。

(参考記事:金正日の女性関係、数知れぬ犠牲者たち

北朝鮮当局もいずれ、脱北した13人への関心を失うだろうが、しばらくの間は本人たちも韓国当局も、気の抜けない日々が続くだろう。

(参考記事:将軍様の特別な遊戯「喜び組」の実態を徹底解剖

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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