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金正恩氏の「ブチ切れる季節」が到来…「拳銃乱射」の過去も

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏

北朝鮮の人権状況の改善を求める決議案の草案が、今週中にも国連総会傘下の第3委員会に上程される模様だと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が27日、国連消息筋からの情報として報じた。

決議案は、11月下旬に第3委員会、12月中旬に国連総会全体会議でそれぞれ採決が行われる見通し。

人権制裁に激怒

国連総会では2005年から毎年、北朝鮮における人権侵害の深刻さを指摘し、責任追及を求める内容の決議が採択されているが、北朝鮮が受ける逆風はどんどん強くなっている。金正恩氏にとっては「憂鬱な季節」と言えるだろう。それでなくともストレスの多い生活をしているのに、心理的圧迫は増すばかりだ。

(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

今年の決議案ではとくに、北朝鮮が海外に派遣している労働者が置かれた劣悪な環境や搾取について、初めて言及されたことが注目される。北朝鮮は近年、40カ国余りに約5万8000人の労働者を派遣。そこからの外貨収入は年間5億5000万ドルに上ると推定されており、核兵器開発を阻止する上でも、このカネの流れを遮断することは重要だ。

ちなみに、北朝鮮には「国際主義戦士」という言葉がある。

北朝鮮はかつて、ベトナム戦争や中東戦争で米国とその同盟国と戦い、経済情勢の良かった時代には、アフリカなどにも軍事顧問や経済分野の技術顧問を派遣していた。

(参考記事:第4次中東戦争が勃発、北朝鮮空軍とイスラエルF4戦闘機の死闘

ここで、外国の戦争に参加することの是非は敢えて問わないことにするが、そのようにして海外で血や汗を流し、犠牲者も出した北朝鮮の軍人や技術者、労働者たちは(本人らが不本意だったとしても)革命を担う「戦士」として称えられたのだ。

しかし、今の海外派遣労働者たちには、そのような栄誉が与えられているようにも見えない。完全に金儲けの道具だ。

現場から逃げ出そうとした労働者がアキレス腱を切られたり、掘削機で足を潰されたりという凄惨な私刑(リンチ)を受けている事実が、そのことを物語っている。

(参考記事:アキレス腱切断、掘削機で足を潰す…北朝鮮労働者に加えられる残虐行為

そのような状況を無くすことは、国際社会と北朝鮮国民の双方にとって利益となる。

この12月にはまた、米国務省が北朝鮮に対する人権制裁リストの第2弾を発表する予定であり、ワシントンDCでは国際法曹協会(IBA)などが、北朝鮮の政治犯収容所における「人道に対する罪」をどのように法的に裁くかを検証する模擬裁判を行う。

米国から人権問題で制裁対象に指定された際、金正恩氏はブチ切れて拳銃を乱射するなどしたという。側近たちは八つ当たりで処刑されないよう、早めに脱北した方が良いのではないか。

(参考記事:金正恩氏が「ブチ切れて拳銃乱射」の仰天情報

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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