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「私を太っちょと呼ばないで」金正恩氏、中国政府に要請か

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏

香港のニュースサイト・蘋果日報が10日、北朝鮮が中国に対し、金正恩党委員長を「金三胖」と呼ばないよう要請したと伝えた。「金三胖」とは、「金氏3代目の太っちょ」という意味だ。「金氏3代目の太っちょ」という意味だ。

女学生とパーティー狂い

中国の検索サイト「百度」「捜狐」などでは検索をかけた結果「関連する法律と政策に基づき、検索結果は表示されません」などと表示される状態になっているため、中国政府は北朝鮮の要求を受け入れたものと思われる。

「金三胖」が禁止ワードになるのは今回が初めてではない。昨年10月に中国共産党序列5位の劉雲山政治局常務委員が北朝鮮を訪問し、朝鮮労働党創建70周年軍事パレードに参加。険悪化していた中朝関係が、一時的に好転した時期にも、検索ができなくなった。

いずれにしても、正恩氏がインターネット上で自分が揶揄されることに、敏感になっている可能性は高いと言えるだろう。

正恩氏は自国メディアに、自分のヘンな写真までどんどん公開させるほど目立ちたがり屋だ。

(参考記事:金正恩氏が自分の“ヘンな写真”をせっせと公開するのはナゼなのか

少しばかり揶揄されても、気にすることはないように思われるが、やはり本人にとっての「NGワード」はあるのかもしれない。

ただ、それが体形に関する言葉であるというのは、やはり意外だ。性格やものの考え方についての情報が少ない正恩氏について語る上で、体形の変化に言及することは避けられない。「血の粛清」が激しくなるのと体重の増加が軌を一にしているとなればなおさらだ。

(参考記事:【写真で振り返る】金正恩氏、年々高まる肥満度…髪型にも変化が

それに、正恩氏の健康が今後どうなっていくのかという点も、アジアの外交・安保情勢を占う上で重要な要素と言える。正恩氏は、自分の体形が注目を集めるのは当然であることを、自覚すべきなのだ。

もっとも、そこを自覚できるのであれば、現在のような生活はしていないかもしれない。韓国の情報機関、国家情報院は先ごろ、国会情報委員会の国政監査で、正恩氏が毎週3、4回ずつ夜通しのパーティー(酒宴)を開き、不摂生な生活と食習慣のために健康不安を抱えているとの分析を報告した。心血管疾患の高リスク群に入るという。

(参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙

正恩氏はネット上の書き込みを気にするより先に、女学生を動員するような乱痴気騒ぎを止め、自分の健康を気にした方がよいのではないか。

それに、中国は「上に政策あれば、下に対策あり」のお国柄だ。蘋果日報によれば、ネットユーザーは「金胖胖胖」、「金three胖」、「金二胖plus」などの言葉に言い換えることで、ネット検閲を回避しているため、効果は全くと言っていいほど出ていない。それどころか、今回の件で中国のネットユーザーは北朝鮮のことを笑いものにしており、却って逆効果が出ているという。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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