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「ほとんどハダカで夜逃げした」北朝鮮女性、人権侵害の実態

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏

米国の人権団体・北朝鮮自由連合の「北朝鮮女性実務グループ」は3月、北朝鮮女性の人権状況の改善に向け国連にいっそうの努力を促すための討論会を、ニューヨークで開催する。同月13日から国連で第61回国連女性の地位委員会が開催されるのに合わせ、中国における北朝鮮女性の人身売買被害を主題として論じるという。

貧困から逃れるために、国境の川を渡って脱北し、中国人男性と結婚する北朝鮮女性は少なくない。幸せに暮らしている人もいる一方で、人身売買の犠牲になり、現地で虐待に遭ったりする女性が後を絶たない。

(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち

米AP通信は昨年、そんな女性のひとりである40歳のキム・ジョンアさんの体験を伝えている。キムさんは貧困と栄養失調に苦しんだ挙句、脱北という選択をした。

「何度自殺しようとしたかわからない。私にとって脱北だけが唯一の生きる道だった」

中国に着いた彼女はブローカーのもとに行った。そこで何度も「品定め」をさせられた。立ち上がって、クルッと回り、体型を見せた。そして、遼寧省瀋陽郊外の農村からやって来た男性に売られた。2万元(約13万円)だった。

「侮辱されたと感じた。私は人扱いされていなかった」

一方、35歳の別のキムさんは、20代の頃に見知らぬ男性の友人と結婚させられた。相手は14歳年上、借金のかたに売られたのだった。

「初めて顔を合わせた夫は30代と言っていたけど、まるで自分の祖父のようで、とても30代には見えなかった。年齢を詐称していたのでしょう」

夫からはほぼ月に一度暴力を振るわれた。そして罵られ、嘲笑われた。

「警察に突き出すぞと脅された。どれだけ屈辱的だったか」

女性たちは人身売買の被害者だ。しかし、中国の公安当局にとってはそのことよりも、彼女たちが北朝鮮人であることの方が重要なようだ。捕まったが最後、北朝鮮に強制送還されてしまう。そして、集結所や労働鍛錬隊(軽犯罪者を収容する刑務所)に入れられ、過酷な日々を送ることになる。

(参考記事:刑務所の幹部に強姦され、中絶手術を受けさせられた北朝鮮女性の証言

44歳のパク・チョンファさんは、人身売買ブローカーの手で中国人男性に売られる前に逃げ出した。

「人身売買された女性は、北朝鮮で社会の最底辺にいた人々だ。私は中国に行って、いい男性に出会い、コメを腹いっぱい食べることを夢見ていた。中国では家畜ですらコメを食べていると聞いたから」

パクさんは他の6人の女性とともに、コンテナに閉じ込められトラックで運ばれた。大量の材木とともに。12時間後、ブローカーは材木をトラックから降ろし始めた。

「恐ろしかった。殺されるかもしれないと思い、私たちは手を繋いで歌を歌って恐怖に耐えていた」

48歳のチェ・オクセさんは中国に暮らして16年になる。彼女は人身売買の犠牲者ではないものの、ソウルに住む脱北者の友人の多くが、中国人男性に売られ、韓国に逃げた人々だ。

「ある友人は、逃げられないようにと夫に足かせをかけられていた」

チェさんの25歳になる姪も、脱北後に偏屈な中国人男性に売られ、2014年に逃げ出し、韓国にたどり着いた。

「姪は、夫に殴られたことはなかったけど、彼女は下着姿で夜逃げした。二度と会いたくないという一心で韓国に逃げてきた」

中国に在住するデイリーNKの対北朝鮮情報筋によると、昨年11月と12月にも、中国国内で移動中あるいは潜伏中だった脱北者30人余りが、公安当局に逮捕された。全員が丹東に移送され、北朝鮮に強制送還されたと見られる。

中国当局が間接的にとは言え、北朝鮮における人権侵害を助長しているのは確かな事実なのだ。

(参考記事:17歳で中国人男性に売られ…脱北女性「まだまだ幼い被害者が大勢いる」

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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