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今後の主流はタブレットではなく「ファブレット」 出荷台数急伸中、今年は昨年の3倍超に

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

ここ最近はパソコンだけでなく、タブレット端末や、スマートフォンの市場も成長が鈍化していると言われているが、米IDCの最新の調査によると、これらの機器で唯一急成長している製品カテゴリーがある。

画面サイズの大きなスマートフォン、「ファブレット」だ。

ファブレットはその大きさが「Phone」と「Tablet」の中間であることから、こう呼ばれるようになった。当初は変わり種のスマートフォンとして扱われることが多かったが、今では主流になりつつあるという。

ファブレットは今後、パソコン、タブレット、スマートフォンを合わせた「スマートコネクテッドデバイス」の市場を牽引していく存在になるという。

今年はノートPCを、来年はタブレットを上回る見通し

IDCの推計によると、ファブレットの今年の世界年間出荷台数は1億7490万台で、ノートパソコンの1億7000万台を上回る見通し。さらに来年の出荷台数は3億1800万台超で、タブレット(2億3300万台)をも上回るという。

IDCが定義するファブレットとは、画面サイズが5.5インチ以上、7インチ未満の端末。米アップルが9月9日のイベントで、現行の4インチよりも大きい4.7インチと5.5インチのアイフォーン(iPhone)を発表すると見られているが、もしその通りなら、同社もファブレット市場に参入することになる。

またIDCの予測する各機器の今年の成長率は、スマートフォン(ファブレットを除く)が12.8%、タブレットが6.5%、ノートパソコンがマイナス4.7%、デスクトップパソコンがマイナス2.3%だ。

これに対し、ファブレットは209.6%と、昨年に比べ3倍以上に拡大するという。今年のスマートフォン出荷台数に占めるファブレットの比率は14.0%。これが2018年には32.2%になるとIDCは予測している。

こうしてファブレット人気が増すなか、その影響はタブレットに表れだしている。これによりタブレット市場の成長が減速するとIDCは見ている。

同社の分析を補足して説明すると次のようになる。

タブレットの成長鈍化、ファブレットが要因

タブレットは2010年にアップルが9.7インチのフルサイズ「アイパッド(iPad)」を発売し、市場が誕生した。

当初はアイパッドサイズの端末が一般的だったが、その後各社が相次ぎ7インチ台の端末を投入し、小型端末が主流になった。この頃アップルも7.9インチのアイパッドミニを発売している。

ところが、ここ最近は小型タブレットが低迷している。ファブレットの台頭がその理由だ。一方で、アップルも12.9インチのアイパッドを計画していると報じられるなど、今は大画面タブレットに注目が集まっている。

IDCによると、大型タブレットの人気は復活しつつあるものの、それでも小型タブレットの減少分を補えない状況だという。

結果として、今後のタブレット市場は、比較的緩やかな成長率で推移していく。推計によると、2018年までのタブレット出荷台数の年平均成長率は6.8%。これに対しファブレットは同60.0%で伸びていくと同社は予測している。

JBpress:2014年9月5日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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