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iPhoneの販売台数は昨年実績大きく上回る見通し、10〜12月期は初の7000万台超へ

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

米アップルのスマートフォン「アイフォーン(iPhone)」の今年10〜12月期における販売台数は、昨年実績を大きく上回る見通しだと、アップルインサイダーなどの米メディアが報じている。

前年同期比40%増、前期比82%増

アイフォーンシリーズの昨年10〜12月期の販売台数は5103万台で、四半期ベースで過去最高を記録していた。しかし今年はこれから40%多い7150万台が予測されるという。7〜9月期の販売実績と比較すると実に82%増になる。

これは、アップル製品の市場動向に詳しい台湾KGI証券のアナリスト、ミン・チー・クオ氏が投資家向けに出した調査リポートで予測したもの。同氏はアップルの新製品やその発売時期を独自の調査で当ててきたことで知られる人物だ。

10〜12月期は年末商戦があるため、アイフォーンの販売は毎年この時期に伸びる。例えば、「4S」を発売した2011年10〜12月は3704万台、「5」を発売した2012年10〜12月は4779万台、そして「5s」と「5c」を発売した昨年10〜12月は前述のとおり5103万台。これらはいずれも四半期の過去最高を更新した。

こうして10〜12月期に記録を塗り替えること自体は驚きではない。ただアップルは初めて「ファブレット」と呼ばれる大型スマートフォンの市場に参入しており、今年は同社の転換点となっている。

米シーネットによると、アップルはこれまで4インチ以下の画面サイズに固執していたため、大画面の「アンドロイド(Android)」端末に市場シェアを奪われてきた。大型化した6シリーズは、そうした消費者層を取り戻し、ライバルに反撃することを狙ったモデルだと、記事は伝えている。

「6 Plus」は供給量が不足

KGI証券のクオ氏の予測によると、この10〜12月期にアイフォーンシリーズで最も販売台数が多いのは、4.7インチ型のiPhone 6で、その数は4165万台。シリーズ全体に占める比率は58%になるという。

これに次ぐのが、5.5インチ型の同6 Plusで、台数は1510万台、全体に占める比率は21%。同氏によると、6 Plusは大きな話題となったものの台数が伸びていない。需要に対し供給量が不足していることがその主な理由という。

このことは、「6 Plusに対する需要が旺盛ということだけでなく、部品・製品の製造工場が量産に関して問題を抱えていることを示している」とクオ氏は指摘している。また同氏は10〜12月期のアップルの業績は、生産能力に依存するところが大きいとも指摘している。

まだ売れる、「5c」と「4S」

一方で、来年1〜3月期は年末商戦の反動があり、シリーズ全体の台数は10〜12月から30.9%落ち込むという。

クオ氏が予測する1〜3月期の各モデルの販売台数は、iPhone 6が2163万台で、10〜12月に比べ48.1%減。6 Plusは1023万台で同32.3%減、5sは736万台で同16.5%減。

これに対し、5cと4Sはそれぞれ同77.3%、58.2%増加すると同氏は見ている。両モデルは比較的小規模ながらも一部の国・地域で販売を行っている。このうち1世代前の廉価モデル、5cは割引販売が奏功し、需要を押し上げるという。

また3世代前の4Sは新興国で販売を続けている。アップルは新興国市場で販売強化を図っており、4Sはまだしばらく伸びるだろうと、クオ氏は予測している。

JBpress:2014年11月26日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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