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「Apple Watch」の販売いよいよ本格化 米家電量販大手の100店舗でも販売開始

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
サンフランシスコのイベントでApple Watchを発表するティム・クックCEO(写真:ロイター/アフロ)

米メディアの報道によると米アップルは腕時計型端末「Apple Watch」の販売を拡大する。

まずは米家電量販大手ベスト・バイの約100店舗でこの8月7日からApple Watchを販売し、今年の年末商戦までに取り扱い店舗を300店に増やす。

同時にベスト・バイのオンラインストア「BestBuy.com」でもApple Watchを取り扱うという。

アップル以外で初、大規模な販売展開

ベスト・バイの発表資料によると、同社が販売するのは、スタンダードモデルの「Apple Watch」とスポーツモデルの「Apple Watch Sport」。

サイズは38mmと42mmの両方をそろえ、モデル数は計16モデルとなる。このほかベスト・バイは、バンドや充電スタンドといった別売アクセサリー製品を50種ほど用意するという。

Apple Watchはこれまでアップルのオンラインストアや直営店で、米国外では高級ブティックや百貨店、家電量販店などで販売していたが、アップル以外の米国小売りチェーンで大規模に販売展開するのはこれが初めてだ。

Apple Watchは、今年4月24日に米国、カナダ、日本、中国、香港、オーストラリア、フランス、ドイツ、英国で発売したが、当初米国ではアップルのオンラインストアのみの販売に限定しており、直営店の店頭販売が始まったのは6月中旬だった。

アップルはその理由として需要が供給量を上回ったことから、先に予約をした顧客から順番に販売するためとしていた。

7月末には22カ国・地域に

そうした中、Apple Watchは6月26日に韓国、台湾、シンガポール、イタリア、スペイン、スイス、メキシコでも販売を始め、7月17日にはオランダ、スウェーデン、タイも加わり、その販売対象は合計19カ国・地域となった。

そして先頃はニュージーランド、トルコ、ロシアのウェブサイトにも案内が掲載され、これらの国で7月31日に発売されることが分かった。

こうしてApple Watchの販売はいよいよ本格化すると米ウォールストリート・ジャーナルや米シーネットの記事は伝えている。

アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は先週行った決算発表の声明で、Apple Watchは今年の年末商戦の主力ギフト商品になると自信を示していた。

同端末はこれまで供給体制の問題から、世界の680店舗でのみ取り扱っていた。これは現在「iPhone」を取り扱っている22万店の1%にも満たない数。アップルは今後Apple Watchの取り扱い店を増やしていくと、同氏は述べていた。

クックCEO、販売減速のリポートを一蹴

なおアップルは今回の業績報告でApple Watchの販売実績を開示しなかった。「ライバルに対し、誕生間もない新製品カテゴリーの情報を与えたくないから」というのがその理由とのことだが、同社のこうした方針によって様々な観測が広がっている。

例えば米ニューヨーク・タイムズによると、アナリストらはApple Watchを含む「その他製品」カテゴリーの売上高を基に、6月末までの販売個数を150万〜300万台と試算した。また米国の市場調査会社ストラテジー・アナリティクスは4〜6月期の出荷個数が400万個になり、アップルの市場シェアは75%に達したと報告した。

一方で、調査会社の米スライス・インテリジェンスは、Apple Watchの1日当たり販売個数は、4月の発売後最初の1週間から、7月初旬までの間に9割減少したと報告した。

ただ、ウォールストリート・ジャーナルによると、このスライス・インテリジェンスのデータについて、クックCEOは「全くのでたらめ」と一蹴している。

同氏は、「むしろ店頭販売が始まった6月中旬以降に販売が一気に伸びた」と述べており、楽観的。「Apple Watchは年末商戦に期待できる」と自信を示しているという。

JBpress:2015年7月29日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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