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世界のパソコン市場、見通しがさらに悪化 ─ 今年の出荷台数は8.7%減、回復への道のり遠い ─

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
「Windows 10」無料提供開始イベントで演説するMicrosoftのCEO(写真:ロイター/アフロ)

米IDCがまとめた最新のリポートによると今年の世界パソコン出荷台数は2億8160万台となり、昨年の実績から8.7%減少する見通し。

5年連続で前年割り込む

これに先立ち5月に公表していたリポートでは、今年の年間出荷台数が同6.2%減少すると予測していたが、今回、見通しを下方修正した。

世界のパソコン市場は来年も引き続き低迷する見込みで、その結果として出荷台数は5年連続で前年実績を下回ると同社は見ている。

IDCによると、今年の4〜6期は年後半に登場する「Windows 10」搭載機への移行期と見られていた。だがノートパソコンの大量在庫やドル高の影響を受け、実際の減少幅は予想を大きく超えた。

今後は経済問題やWindows 10の無料アップグレード、新モデルの不足などが足を引っ張り、2016年も市場成長の見込みはなさそうだと同社は指摘している。

市場回復は2017年か

一方で2017年は、買い替え周期となることが予想され、Windows 10の無料アップグレードも終了するため、緩やかな回復が期待できるという。法人市場やノートパソコンの分野でプラス成長すると同社は分析している。ただし消費者向け製品の減少は2019年まで続くという。

IDCのアナリスト、ジェイ・チョウ氏によると、明るい兆しがあるのはタブレット端末にもなる1台2役のパソコンや超薄型パソコンの分野。メーカー各社がこうしたモバイルパソコンの改良を続けるため、これらの機種は高い伸び率で成長するという。

またWindows 10がタッチ機能を重視しなくなったため、従来型パソコンの使い勝手もなじみのあるものに戻り、オールインワン型などのデスクトップパソコンの出荷台数が伸びると同氏は述べている。

ただし、IDCの予測値を見ると、2015年から2019年までの出荷台数の年平均成長率は、ノートパソコンが1.2%、デスクトップパソコンがマイナス1.7%となっている。

ノートパソコンとデスクトップパソコンを合わせた出荷台数は横ばい(0.0%)で推移すると同社は見ており、パソコン市場がかつてのような成長を遂げるといったことは当面なさそうだ。

タブレットの見通しも下方修正

IDCが併せて公表した、タブレット端末の世界市場リポートによると、今年の年間出荷台数は2億1200万台で、昨年実績から8.0%減少する見通し。IDCはこちらも従来予測の同3.8%減から下方修正している。

同社が7月にまとめたリポートによると、今年4〜6月のタブレットの世界出荷台数は4470万台で、1年前から7.0%減少した。

タブレットの四半期出荷台数は米アップルが初代「iPad」を発売した2010年以降、一貫して前年実績を上回る水準で伸び続けてきたが、昨年10〜12月に初めて前年割れとなった。

タブレット市場は今年1〜3月と4〜6月期も同様に振るわず、3四半期連続で前年実績を下回っている。IDCによるとその要因は、買い替え周期の長期化や、大型スマートフォンとの競争激化だという。

ただし同社は、着脱式キーボードを備え、パソコンとしても使える2-in-1型のタブレットには明るい材料があると分析している。同社の予測では今年の2-in-1型端末の出荷台数は前年比で86.5%増加する見通し。

もっともIDCが予測するその台数は1470万台と、市場全体の1割にも満たない。このリポートについて伝えている米シーネットの記事は、「(2-in-1型では)タブレット市場全体の減少速度を遅らせるには不十分だ」と指摘している。

JBpress:2015年8月28日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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