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アップルが全面ガラス素材の「iPhone」を市場投入したい理由

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
Manhattan, Apple store, Grand Army Plaza(写真:アフロ)

複数の米メディアの報道によると、米アップルは来年(2017年)に市場投入する「iPhone」の将来モデルで、本体デザインを大幅に刷新するという。

「もはや新鮮味がなくなったアルミ素材」

iPhoneの2017年モデルに関する計画については、先頃、アップルの新製品やその発売時期を当ててきた台湾KGI証券の著名アナリスト、ミン・チー・クオ氏が、調査ノートで報告した内容が話題になったが、今回の情報源も同氏という。

米マックルーマーズや米9to5Macが入手した最新の調査ノートによると、iPhoneの2017年モデルは、その本体ケースに用いられる素材がすべてガラスになる。

アップルは2012年に発売した「iPhone 5」から、現行の「iPhone 6s」シリーズまで、その本体ケースにアルミニウム素材を採用してきた。

そして今年発売されると見られている「iPhone 7」(通称)にもアルミニウムが使われるとなれば、5年連続で同じ素材のデザインを採用することになり、もはや消費者にアピールできる新鮮味はなくなる、とクオ氏は述べている。

一方、ライバルメーカーのスマートフォンは数年前までプラスチック素材が多かったが、ここ最近は多くがアルミニウムを採用している。このためiPhoneはもはや他社製品と明確に差異化できる要素がなくなってきたという。

iPhoneの今年の出荷台数は減少すると予測される中、アップルは、まったく新しいデザインを採用し、iPhoneの競争力を高めることを狙っている。そうした同社には、アルミニウム以外の素材を使いたいという強い意欲があるはずだと、クオ氏は結論付けている。

投資家は重さと強度の問題を指摘

クオ氏は今年3月に出した調査ノートで、iPhoneの2017年モデルは、その本体ケースの構造設計が「iPhone 4/4S」と似ていると報告していた。これは、前面と背面のガラス素材で、側面の金属フレームを挟むというデザインだ。

また同氏はiPhoneの2017年モデルは、より薄く、軽量なAMOLEDディスプレイを採用し、画面やガラスケースがカーブしたデザインになるとも報告していた。

今回の調査ノートでも同氏は、2017年モデルはAMOLEDディスプレイを採用すると報告している。ただクオ氏によると、ガラス素材の本体には、iPhoneの重量が増すといった問題や、落下試験に耐えられる強度が得られないといった問題があると指摘する投資家もいるという。

しかしこれについて同氏は反論している。

まず、重量については、従来よりも軽量なAMOLEDディスプレイを採用するため、ガラス素材によって重くなる分を相殺でき、大きな問題にはならないという。

本体の強度については、iPhone 4/4Sですでにガラス素材のスマートフォンを製品化したという実績がアップルにはある。同社はその構造設計に戻るにすぎず、こちらも問題にはならないとしている。

サムスン、ジャパンディスプレイ、シャープなどが部品供給か

なお前述のマックルーマーズの記事は、クオ氏以外の情報筋の話として、アップルが来年、OLEDディスプレイを搭載するiPhoneを発売すると伝えている。

そして見込まれる最終的な部品供給会社として、韓国サムスンディスプレイ、韓国LGディスプレイ、台湾AUオプトロニクス(AUO、友達光電)、ジャパンディスプレイ、台湾ホンハイ(鴻海精密工業)の傘下に入るシャープなどの名が挙がっているとマックルーマーズは伝えている。

JBpress:2016年4月20日号に掲載:オリジナルタイトル「アップル、本体全体がガラス素材の「iPhone」計画中 大胆なデザイン刷新で他社スマホとの差異化狙う」)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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